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甲状腺ホルモン受容体α1の疾患関連変異はマウスの難聴と感覚有毛細胞のパターン形成不全を引き起こす

A disease-associated mutation in thyroid hormone receptor α1 causes hearing loss and sensory hair cell patterning defects in mice

Research Article

SCIENCE SIGNALING
14 Jun 2022 Vol 15, Issue 738
DOI: 10.1126/scisignal.abj4583

Corentin Affortit1,*, Fabian Blanc1,2, Jamal Nasr1, Jean-Charles Ceccato1, Suzy Markossian3, Romain Guyot3, Jean-Luc Puel1,†, Frédéric Flamant3,†, Jing Wang1,2,*

  1. 1 Institute for Neurosciences of Montpellier (INM), University Montpellier, INSERM, Montpellier, France.
  2. 2 Department of ENT and Head and Neck Surgery, University Hospital of Montpellier, Montpellier, France.
  3. 3 Institut de Génomique Fonctionnelle de Lyon (IGFL), INRAE USC1370, CNRS (UMR5242), ENS, Lyon, France.

* Corresponding author. Email: jing.wang@inserm.fr (J.W.); corentinaugustepierre-affortit@uiowa.edu (C.A.)

† These authors contributed equally to this work.

TRα1でより良い聴力

甲状腺ホルモン受容体TRβに影響を与える変異は、甲状腺ホルモンに対する抵抗性を引き起こし、難聴と関連していることが示されている。Affortitらは、TRα1をコードする遺伝子のヒトの疾患関連変異と同じドミナントネガティブ対立遺伝子を有する幼若マウスには、加齢とともに悪化する聴覚障害があることを実証した。これらのマウスの蝸牛外有毛細胞(OHC)は異常に配向しているか存在せず、OHC生存促進因子の誤局在と酸化ストレス増加の兆候を示し、これは代謝ストレスにおけるTRの既知の役割と一致した。したがって、疾患関連型TRα1はOHCの適切な発生と機能を妨げ、TRHA変異をもつ患者は加齢性難聴のリスクが高い可能性があることを示唆する。

要約

甲状腺ホルモン受容体α(TRα1)をコードするTRHAの変異による甲状腺ホルモンに対する抵抗性は、さまざまな臨床症状を示す。TRβ1とTRβ2に影響を与える変異は、マウスで難聴を引き起こし、ヒトの難聴と関連している。TRα1も聴覚機能にも影響を与えるかどうかを調べるため、ヒトTRHA変異と同様で、甲状腺ホルモンに対する組織の感受性を低下させるThraのフレームシフト変異のヘテロ接合マウス(ThraS1/+マウス)を用いた。野生型同腹仔と比較して、ThraS1/+マウスは、幼若期に中等度の高周波感音難聴を示し、加齢性難聴が増加した。超微細構造検査により、感覚外有毛細胞(OHC)の約20%の異常な配向、およびOHCと聴覚神経線維の両方で断片化された形態のミトコンドリアとオートファジー液胞の数の増加が明らかになった。OHC側壁成分の分子解剖により、カリウムイオンチャネルKcnq4が変異型OHCの細胞質に異常に局在化していることがわかった。さらに、変異蝸牛では、蝸牛細胞の加齢性損傷の増加に伴って酸化ストレス、オートファジー、およびマイトファジーが増加し、OHCの適切な発生とOHC機能の維持にTRα1が必要であることを示した。これらの知見は、TRHA変異をもつ患者は、診断が不十分な軽度の難聴を呈し、加齢性難聴になりやすい可能性があることを示唆する。

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