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ベージュ脂肪の生合成を阻害する

Blocking beige fat biogenesis

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
30 Aug 2022 Vol 15, Issue 749
DOI: 10.1126/scisignal.ade6057

AMY E. BAEK

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: abaek@aaas.org

Q. Wang, H. Li, K. Tajima, A. R. P. Verkerke, Z. H. Taxin, Z. Hou, J. B. Cole, F. Li, J. Wong, I. Abe, R. N. Pradhan, T. Yamamuro, T. Yoneshiro, J. N. Hirschhorn, S. Kajimura, Post-translational control of beige fat biogenesis by PRDM16 stabilization. Nature, 10.1038/s41586-022-05067-4 (2022).

ユビキチンE3リガーゼ複合体はベージュ脂肪の生成を抑える。

熱産生性の褐色脂肪組織は、肥満や代謝性疾患を予防する可能性がある。白色脂肪組織が熱産生特性を獲得するように誘導されると、ベージュ脂肪組織と呼ばれる。PR domain-containing 16(PRDM16)はベージュ脂肪組織の生成に重要な転写コレギュレーターであり、翻訳後に調節されると考えられている。Wangらは、cullin-RINGユビキチンE3リガーゼのCUL2が、PRDM16タンパク質の存在量を抑制することを見出した。鼠径部白色脂肪組織由来の前駆脂肪細胞においてCUL2を除去すると、PRDM16タンパク質の存在量増加と半減期延長が生じ、褐色およびベージュ脂肪機能に関連する遺伝子の発現増加を伴った。白色および褐色脂肪細胞でCUL2を欠損したマウスにおいては、高脂肪食を与えた場合に、対照マウスと比較して、体重増加が少なく、全身の耐糖能とインスリン感受性が良好で、血清コレステロールが低く、炎症が軽度であった。アミロイド前駆体タンパク質結合タンパク質2(APPBP2)が、PRDM16をCUL2に動員してポリユビキチン化させた。APPBP2を除去すると、内因性PRDM16のタンパク質安定性が向上し、白色および褐色脂肪細胞でAPPBP2を欠損したマウスにおいては、PRDM16タンパク質がより多く、CUL2ノックアウトマウスと同様の表現型が認められた。APPBP2の欠損により、褐色およびベージュ脂肪に豊富な遺伝子の発現がPRDM16依存的に増加した。ヒトにおいて、APPBP2 S561N SNPバリアントは、WT APPBP2と比較してPRDM16との相互作用が弱かった。S561N変異を有するAppbp2ノックインマウスでは、褐色およびベージュ脂肪に関連する遺伝子の発現が増加していた。これらの結果は、PRDM16タンパク質安定性の調節に関する洞察を提供しており、ベージュ脂肪組織の生成に関する理解に役立つ。

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