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神経細胞と神経膠腫のクロストーク

Neuronal-glioma cross-talk

Editors' Choice

SCIENCE SIGNALING
16 May 2023 Vol 16, Issue 785
[DOI: 10.1126/scisignal.adi6672]

Amy E. Baek

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: abaek@aaas.org

S. Krishna, A. Choudhury, M. B. Keough, K. Seo, L. Ni, S. Kakaizada, A. Lee, A. Aebedi, G. Popova, B. Lipkin, C. Cao, C. N. Gonzales, R. Sudharshan, A. Egladyous, N. Almeida, Y. Zhang, A. M. Molinaro, H. S. Venkatesh, A. G. S. Daniel, K. Shamardani, J. Hyer, E. F. Chang, A. Findlay, J. J. Phillips, S. Nagarajan, D. R. Raleigh, D. Brang, M. Monje, S. L. Hervey-Jumper, Glioblastoma remodelling of human neural circuits decreases survival. Nature 10.1038/s41586-023-06036-1 (2023).

神経膠腫細胞による神経回路の再構築が患者生存率を低下させる

神経膠芽腫と神経環境は、互いに双方向に影響する。神経細胞の活性は神経膠腫の増悪を促進しうるし、逆に、神経膠芽腫は神経細胞の興奮性を高めうる。Krishnaらは、神経膠芽腫による神経細胞ネットワークへの作用が神経膠腫の増悪と患者生存率に影響するかどうかを調べた。患者の皮質脳波(ECoG)では、腫瘍領域と非腫瘍領域の皮質興奮性に差異が認められ、腫瘍が浸潤した皮質では複雑な言語を理解する能力が損なわれていた。次に、RNAseq解析用に、機能的に接続している神経膠腫の領域から患者の原発性神経膠芽腫組織サンプルを採取した。機能的接続性の高い(HFC)領域では、機能的接続性の低い(LFC)領域に比べて、トロンボスポンジン1(THBS1、TSP-1)のようなシナプス形成因子など、神経回路の形成に関連する因子のmRNA量とタンパク質量が増加していた。HFC領域とLFC領域から採取した原発性神経膠芽腫細胞の生検では、HFC領域でシナプス前点およびシナプス後点が増加していたことから、この領域でのシナプス形成の増加が示された。TSP-1量に差がある神経膠腫のシナプス接続性への作用を測定するために、HFC腫瘍領域由来とLFC腫瘍領域由来の神経膠腫細胞をマウス海馬神経細胞と共培養すると、HFC含有サンプルではシナプス前点とシナプス後点の共局在が促進されていた。誘導された神経細胞からなるオルガノイドモデルと神経膠腫細胞を共培養すると、HFC神経膠腫細胞はオルガノイドに取り込まれたが、LFC神経膠腫細胞は最小限であった。LFC神経膠腫の共培養にTSP-1を導入すると、取り込みが促進された。標識されたHFC神経膠腫細胞とLFC神経膠腫細胞をマウス海馬に異種移植すると、シナプスの総数はHFC神経膠腫異種移植片のほうが多かった。また、HFC神経膠腫細胞は、マウス海馬神経細胞と一緒に培養すると増殖した。ヒトでは、機能的接続性がより高い患者で生存率がより低く、これは循環血清TSP-1量の増加と相関した。ガバペンチンはTSP-1受容体α2δ-1を遮断し、神経細胞と神経膠腫の共培養にガバペンチンを加えると、同調したネットワークバーストとHFC神経膠腫細胞の増殖が減少した。この研究は、神経膠腫と周囲の神経細胞のコミュニケーションについて洞察を与え、神経膠腫の治療法開発のための戦略を示唆するものである。

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