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セレウス菌(Bacillus cereus)毒素alveolysinは、CFAP100を介して微小管の構造変化を誘導することにより腸上皮バリアを破壊する

The Bacillus cereus toxin alveolysin disrupts the intestinal epithelial barrier by inducing microtubule disorganization through CFAP100

Research Article

SCIENCE SIGNALING
16 May 2023 Vol 16, Issue 785
[DOI: 10.1126/scisignal.ade8111]

Shuang Sun1, Zhaoyang Xu1, Haijie Hu1, Manxi Zheng1, Liang Zhang1, Wei Xie1, Lei Sun1,

Peiwei Liu1, Tianliang Li1, Liangran Zhang1, Min Chen2, Xueliang Zhu3, Min Liu1, *, Yunfan Yang4, *, Jun Zhou1, 5, *

  1. 1 Center for Cell Structure and Function, Haihe Laboratory of Cell Ecosystem, Shandong Provincial Key Laboratory of Animal Resistance Biology, Collaborative Innovation Center of Cell Biology in Universities of Shandong, Institute of Biomedical Sciences, College of Life Sciences, Shandong Normal University, Jinan 250014, China.
  2. 2 State Key Laboratory of Microbial Technology, Shandong University, Qingdao 266237, China.
  3. 3 State Key Laboratory of Cell Biology, Shanghai Institute of Biochemistry and Cell Biology, Center for Excellence in Molecular Cell Science, Chinese Academy of Sciences, Shanghai 200031, China.
  4. 4 Department of Cell Biology, School of Basic Medical Sciences, Cheeloo College of Medicine, Shandong University, Jinan 250012, China.
  5. 5 State Key Laboratory of Medicinal Chemical Biology, College of Life Sciences, Nankai University, Tianjin 300071, China.

* Corresponding author. Email: junzhou@sdnu.edu.cn (J.Z.); yunfanyang@sdu.edu.cn (Y.Y.); minliu@sdnu.edu.cn (M.L.)

毒素により誘導される接合部機能不全

食品由来の病原体であるセレウス菌(Bacillus cereus)は、腸上皮細胞を傷害する種々の毒素を産生する。Sunらは、マウスの腸上皮バリアを傷害し、菌から分泌される細孔形成毒素alveolysinに依存する形で培養ヒト結腸上皮細胞の単層膜を透過させるセレウス菌株を同定した。alveolysinによって生じた急性の膜損傷は速やかに修復されたものの、この毒素は、微小管結合タンパク質CFAP100の産生を増大させることでも細胞接合部の持続的破綻を引き起こした。CFAP100は微小管の重合と安定性を促進し、その結果、微小管ネットワークの構造変化と細胞接合部障害をもたらした。この機構がセレウス菌感染の消化器症状に寄与し、細菌が腸から逃れ全身性感染を引き起こすことを可能にすると考えられる。-AMV

要約

セレウス菌(Bacillus cereus)は、主として自然消退性の催吐や下痢性疾患を引き起こすグラム陽性菌であるが、皮膚感染および菌血症も引き起こすことがある。セレウス菌摂取による症状は、胃および腸上皮を標的とする種々の毒素の産生に依存する。ヒト便検体からの分離菌のうち、マウスの腸管バリア機能を傷害する細菌をスクリーニングした結果、腸上皮のタイトジャンクションおよびアドヘレンスジャンクションを破壊するセレウス菌株を同定した。この活性には、細孔形成性の外毒素であるalveolysinが介在していた。Alveolysinは腸上皮細胞において膜結合型タンパク質CD59および繊毛・鞭毛関連タンパク質100(CFAP100)の産生を増大させた。In vitroにおいてCFAP100は微小管と相互作用し、微小管の重合を促進した。腸上皮細胞におけるCFAP100の過剰発現は微小管を安定化し、それにより微小管ネットワークの構造変化およびタイトジャンクションとアドヘレンスジャンクションの破壊をもたらした。Alveolysinによる細胞接合部の破壊は、CFAP100の増加、ひいてはCD59およびPI3K-AKTシグナル伝達活性化に依存していた。これらの知見は、セレウス菌のalveolysinは膜に細孔を形成することに加え、上皮細胞接合部を破壊することで腸管症状と一致する形で腸上皮を透過性にできること、さらに、それによって細菌は腸管から逃れて全身性感染を引き起こすことができることを示している。これらの結果は、セレウス菌に関連した腸疾患および全身性感染の予防に、alveolysinまたはCFAP100を標的とすることの潜在的価値を示唆している。

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