全身性炎症を脳から

Systemic inflammation from the brain

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
16 Jan 2024 Vol 17, Issue 819
[DOI: 10.1126/scisignal.adn9627]

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.

Corresponding author. Email: jfoley@aaas.org

C. K. Wong, B. A. McLean, L. L. Baggio, J. A. Koehler, R. Hammoud, N. Rittig, J. M. Yabut, R. J. Seeley, T. J. Brown, D. J. Drucker, Central glucagon-like peptide 1 receptor activation inhibits Toll-like receptor agonist-induced inflammation. Cell Metab. 36, 130-143e5 (2024).

中枢神経系(CNS)におけるグルカゴン様ペプチド1受容体アゴニストの作用が全身性炎症を軽減させる。

グルカゴン様ペプチド1受容体アゴニスト(GLP-1RA)は、2型糖尿病(T2D)および肥満を呈する個人の血糖と体重を減少させる。また、GLP-1RAは、そのような人々の心血管イベントの発生を減少させ、抗炎症作用も有する。Wongらは、ほとんどの免疫細胞種でGLP-1Rの存在量が少ないことに注目し、GLP-1RAの全身性抗炎症作用が神経細胞上のGLP-1Rに媒介されるかどうかを調べた。様々なToll様受容体(TLR)アゴニストをマウスに腹腔内(i.p.)注射すると、炎症性サイトカインTNF-αの血漿濃度が高まったが、この応答は、臨床的に使用されているGLP-1RAであるエキセンディン4を同時注射すると減弱された。エキセンディン4は、視床下部と脳幹のGLP-1R量が減少しているLPS処置マウスの全身性炎症を抑制できなかったが、造血細胞と内皮細胞のすべてでGLP-1RをノックアウトしたLPS処置マウスの全身性炎症は抑制できた。GLP-1RAは、多微生物性敗血症モデルである盲腸スラリーのi.p.注射によって引き起こされる炎症、細菌感染、低体温からマウスを保護したが、神経細胞のGLP-1Rを欠損させたマウスは保護されなかった。α1アドレナリン作動性受容体遮断薬でマウスを処置すると、LPS処置マウスにおけるエキセンディン4の抗炎症作用は消失した。同様に、κオピオイド受容体によるシグナル伝達の遮断も、LPS処置マウスにおけるエキセンディン4による血漿中TNF-α量の減少を阻止した。α1アドレナリン作動性およびκオピオイド受容体シグナル伝達がGLP-1RAの作用を遮断する機構はまだ解明されていないが、これらの知見は、中枢神経系(CNS)における抗炎症性GLP-1Rシグナル伝達がTLRに媒介される全身性炎症を軽減することを示唆している。

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