痒みを分極化する

Polarizing itch

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
19 Mar 2024 Vol 17, Issue 828
[DOI: 10.1126/scisignal.adp2197]

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: jfoley@aaas.org

N. Gour, H. M. Yong, A. Magesh, A. Atakkatan, F. Andrade, S. Lajoie, X. Dong, A GPCR-neuropeptide axis dampens hyperactive neutrophils by promoting an alternative-like polarization during bacterial infection. Immunity 57, 333-348 (2024).

C. H. Hiroki, B. G. Yipp, Neutrophils are itching to specialize. Immunity 57, 198-200 (2024).

好中球上の痒み関連GPCRが細菌感染中の好中球の活性化を調節する。

好中球は、感染に対する自然免疫応答のきわめて重要な早期メディエータであるが、異なる機能をもつ分極した状態で存在する(HirokiおよびYippによるcommentary参照)。炎症性(N1)好中球は、インターフェロン-γ(IFN-γ)によって誘導され、活性酸素種(ROS)と好中球細胞外トラップ(NET)の産生などの抗菌応答を促進する。対照的に、N2好中球は、より抗炎症性の性質を有し、組織の修復を促進する。ニューロペプチドFF(NPFF)によって活性化されるMrgpra1など、Mas関連Gタンパク質共役受容体(GPCR)ファミリーのメンバーは、感覚ニューロンにおいて痒み応答や痛み応答を仲介する機能でもっともよく知られている。しかし、Mrgpra1は、ある種の免疫細胞によっても発現される。Gourらは、マウスの細菌感染状況下において、Mrgpra1を介したNPFFによるシグナル伝達が、細胞内在的に好中球の分極を調節することを明らかにした。野生型(WT)マウスから単離された好中球と比べて、Mrgpra1ノックアウト(KO)マウスから単離された好中球は、in vitroで細菌ペプチドグリカンに曝露したときに、ROSとNETをより多く産生した。細菌性肺感染症を有するマウスでも同様の表現型が観察され、Mrgpra1 KOマウスでは、対応するWTマウスに比べて、細菌排除の改善がみられた。肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)に感染したマウスから単離された好中球のRNAシーケンス解析では、Mrgpra1 KO好中球のほうが、WT好中球よりも、IFN-γシグナル伝達に関連する遺伝子の発現量が多いことが示された。WT好中球に比べて、Mrgpra1 KO好中球ではSTAT1のリン酸化が促進されており、この結果はMrgpra1によるIFN-γシグナル伝達の阻害と合致する。フローサイトメトリー解析では、細菌に感染したマウスの肺でNPFF+好中球数が増加していることが明らかになった。このNPFF+好中球はN2好中球のマーカーを発現していたが、NPFF好中球はIFN-γに関連するN1表現型を呈していた。in vitroでは、組み換えNPFFが、IFN-γに誘導されるSTAT1のリン酸化を阻害した。これと一貫して、細菌感染状況下において、WTマウスでは、組み換えNPFFによってROS産生好中球の発生頻度が抑制され、細菌排除が低下したが、Mrgpra1 KOマウスでは、そのような効果は認められなかった。まとめると、これらのデータは、NPFF-Mrgpra1軸が細菌感染時のN1好中球とN2好中球の均衡を調節することによって、炎症性細胞の生成を抑制して抗菌応答の程度を調節していることを示唆している。

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