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CXCL17は、グリコサミノグリカンが関わる作用機序を介して働く、CXCR4のアロステリック阻害分子である

CXCL17 is an allosteric inhibitor of CXCR4 through a mechanism of action involving glycosaminoglycans

Research Article

SCIENCE SIGNALING
19 Mar 2024 Vol 17, Issue 828
[DOI: 10.1126/scisignal.abl3758]

Carl W. White1, 2, 3, 5, 6, *, Simon Platt1, 2, Laura E. Kilpatrick2, 4, Natasha Dale3, 5, Rekhati S. Abhayawardana3, 5, Sebastian Dekkers1, 2, 4, Nicholas D. Kindon2, 4, Barrie Kellam2, 4, Michael J. Stocks4, Kevin D. G. Pfleger3, 5, 6, *, Stephen J. Hill1, 2, *

  1. 1 Cell Signalling and Pharmacology Research Group, Division of Physiology, Pharmacology and Neuroscience, School of Life Sciences, University of Nottingham, Nottingham NG7 2UH, UK.
  2. 2 Centre of Membrane Proteins and Receptors, University of Birmingham and University of Nottingham, The Midlands, UK.
  3. 3 Harry Perkins Institute of Medical Research and Centre for Medical Research, University of Western Australia, QEII Medical Centre, Nedlands, Western Australia 6009, Australia.
  4. 4 School of Pharmacy, Biodiscovery Institute, University of Nottingham, Nottingham NG7 2RD, UK.
  5. 5 Australian Research Council Centre for Personalised Therapeutics Technologies, Melbourne, Victoria, Australia.
  6. 6 Dimerix Limited, Melbourne, Victoria, Australia.

* Corresponding author. Email: stephen.hill@nottingham.ac.uk(S.J.H.); kevin.pfleger@uwa.edu.au (K.D.G.P.); carl.white@perkins.uwa.edu.au (C.W.W.)

Editor's summary

炎症が認められている間、粘膜部位に豊富に存在するオーファンケモカインCXCL17が自然免疫細胞の動員を助けている。Whiteらは、CXCL17との結合について一連のケモカイン受容体をスクリーニングし、CXCL17の脱オーファン化を試みた。CXCL17は、無傷細胞ではケモカイン受容体CXCR4とのリガンド結合およびCXCR4の活性化をアロステリックに阻害したが、分離膜の調製液中においては、CXCR4とそのアゴニストCXCL12との結合にも、そのアンタゴニストとの結合にも影響しなかった。CXCL17の推定グリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインを破壊すると、CXCR4とその相互作用およびCXCR4の阻害が低下した。まとめるとこれらの知見は、CXCL17が、GAG結合タンパク質に依存する形でCXCR4シグナル伝達の内因性抑制因子として働くことを示唆している。—Amy E. Baek

要約

CXCL17は主に粘膜組織に発現するケモカインであり、粘膜組織において単球、樹状細胞およびマクロファージの走化性を促進し、さらに抗菌性も有している。CXCL17は炎症性疾患の発症および数種のがんの進展にも関係し、肺のウイルス感染が認められる間はその発現が亢進している。とはいえ、健康および疾病状態におけるCXCL17の正確な役割についてはさらなる研究が必要であり、また、CXCL17の機能的反応を媒介している分子標的を確認する必要もある。本稿でわれわれは、様々な生物発光共鳴エネルギー転移(BRET)ベースのアッセイ法を用いて、CXCR4を介したシグナル伝達およびリガンド結合をCXCL17が阻害することを実証した。さらにCXCL17は、VEGFR2共受容体であるニューロピリン1と相互作用していた。加えて、CXCL17は無傷細胞においてのみCXCR4リガンド結合を阻害し、この効果は、既知のグリコサミノグリカンバインダーであるスルフェンおよび硫酸プロタミンにより模倣されることを実証した。CXCL17の推定GAG結合ドメインの破壊によりCXCR4との結合が阻害された。このことは、CXCL17によるCXCR4の阻害が、グリコサミノグリカンを含有する修飾タンパク質の存在を潜在的に必要とする作用機序によることを示唆していた。まとめるとこれらの結果は、CXCL17がCXCR4の内因性抑制分子であることを明らかにし、また、CXCL17の機能およびCXCR4シグナル伝達の調節に関するわれわれの理解が一歩進んだことを示している。

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