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アルツハイマー病に関連する脂肪滴

Lipid drops in on Alzheimer’s disease

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
2 Apr 2024 Vol 17, Issue 830
[DOI: 10.1126/scisignal.adp4951]

Amy E. Baek

Science Signaling,AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: abaek@aaas.org

M. S. Haney, R. Pálovics, C. N. Munson, C. Long, P. K. Johansson, O. Yip, W. Dong, E. Rawat, E. West, J. C. M. Schlachetzki, A. Tsai, I. H. Guldner, B. S. Lamichhane, A. Smith, N. Schaum, K. Calcuttawala, A. Shin, Y. H. Wang, C. Wang, N. Koutsodendris, G. E. Serrano, T. G. Beach, E. M. Reiman, C. K. Glass, M. Abu-Remaileh, A. Enejder, Y. Huang, T. Wyss-Coray, APOE4/4 is linked to damaging lipid droplets in Alzheimer's disease microglia. Nature, (2024).

ミクログリアへの脂肪滴蓄積によりAPOE依存的に神経毒性が増強する。

アルツハイマー病(AD)と関連してグリア細胞中に脂肪滴の存在が認められる。脂質代謝関連遺伝子APOE、特に2コピーのAPOE4アレルの存在は、ADの主要なリスク因子である。Haneyらは、グリア細胞中の脂質蓄積がAPOEリスク因子と関連しているか否かを調べ、2コピーのAPOE4またはAPOE3(それぞれAPOE4/4APOE3/3)を有するAD患者ならびにAPOE3/3遺伝子型を有する対照者から死後に提供された前頭皮質組織を用い、single-nucleus RNAシーケンシングを実施した。最も差次的に発現していた遺伝子は、脂質生合成に重要な酵素をコードするacyl-CoA synthase long-chain family member 1ACSL1)であった。ACSL1の発現は、他のあらゆる細胞種と比べてAPOE4/4 ADミクログリアにおいて最も豊富であった。さらにACSL1の発現は、ミクログリア中の脂肪体の存在の増加とも相関していた。培養ミクログリアをβ-アミロイド線維で処理したとき、APOE4/4細胞では脂肪滴の蓄積が生じたが、APOEをノックアウトした場合は蓄積が生じなかった。さらにACSL1阻害剤で処理すると、APOE4/4ミクログリア中の脂肪滴の蓄積が消失した。最後に、APOE4/4ミクログリアを高脂肪滴群と低脂肪滴群に分け、各群の馴化培地を培養下のニューロンに添加した。高脂肪滴ミクログリアからの馴化培地を添加した場合にのみ、ニューロンにおけるADと関連した高濃度のリン酸化タウが誘導された。これらの知見から、脂肪滴の蓄積とADの遺伝的リスク因子の間には重要な関係がある可能性が示された。

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