細菌誘発性のBBB破壊

Bacteria-induced BBB breakdown

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SCIENCE SIGNALING
4 Jun 2024 Vol 17, Issue 839
[DOI: 10.1126/scisignal.adq7330]

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: avanhook@aaas.org

C. Wei, W. Jiang, R. Wang, H. Zhong, H. He, X. Gao, S. Zhong, F. Yu, Q. Guo, L. Zhang, L. D. J. Schiffelers, B. Zhou, M. Trepel, F. I. Schmidt, M. Luo, F. Shao, Brain endothelial GSDMD activation mediates inflammatory BBB breakdown. Nature 629, 893-900 (2024).

細菌のLPSが、内皮細胞のパイロトーシスを誘導することによって、血液脳関門を破壊する。

細菌性リポ多糖(LPS)は、血液脳関門(BBB)を破壊する能力をもつ。これは主に、細胞表面LPS受容体であるToll様受容体4(TLR4)の活性化によって引き起こされる抗菌応答の結果であると考えられている。しかし、細胞に取り込まれたLPSは、オリゴマー化して非標準的インフラマソームを形成するカスパーゼ(マウスではカスパーゼ11、ヒトではカスパーゼ4およびカスパーゼ5)も直接活性化し、ポア形成タンパク質のガスダーミンD(GSDMD)を切断して活性化することにより、パイロトーシスを引き起こす。Weiらは、マウスにおけるLPS誘発性のBBB破壊はカスパーゼ11とGSDMDに依存するが、TLR4による炎症性サイトカインの誘導には依存しないことを見出した。LPS曝露により、脳内皮細胞において、GSDMD活性化、細胞透過化、パイロトーシスを示唆する形態的変化が誘導された。GSDMDは、LPS誘発性BBB破壊のために脳内皮細胞で特異的に必要とされ、これらの細胞における異所性GSDMD活性化が、BBBを破壊するのに十分であった。肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の臨床分離株から精製されたLPSは、培養ヒト細胞においてカスパーゼ4依存性のGSDMD活性化とパイロトーシスを刺激し、カスパーゼ4発現マウスに肺炎桿菌を感染させると、GSDMD依存的にBBBが障害された。最後に、LPSまたは肺炎桿菌に曝露したマウスにおいて、活性型のGSDMDを標的とするナノボディにより、BBBバリアの破壊が防止された。これらの結果は、循環LPSが、炎症性サイトカインの誘導非依存的に、非標準的インフラマソームの活性化を介して、BBB破壊を誘発する能力を有することを示唆している。

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