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増殖因子に依存したGαiのリン酸化がGタンパク質共役受容体による古典的シグナル伝達を形作る

Growth factor-dependent phosphorylation of Gαi shapes canonical signaling by G protein-coupled receptors

Research Article

SCIENCE SIGNALING
4 Jun 2024 Vol 17, Issue 839
[DOI: 10.1126/scisignal.ade8041]

Suchismita Roy1, Saptarshi Sinha1, Ananta James Silas1, Majid Ghassemian2, Irina Kufareva3, *, Pradipta Ghosh1, 4, 5, *

  1. 1 Department of Cellular and Molecular Medicine, University of California San Diego, San Diego, CA 92093, USA.
  2. 2 Department of Chemistry and Biochemistry, Biomolecular and Proteomics Mass Spectrometry Facility, University of California San Diego, San Diego, CA 92093, USA.
  3. 3 Skaggs School of Pharmacy and Pharmaceutical Sciences, University of California San Diego, San Diego, CA 92093, USA.
  4. 4 Department of Medicine, University of California San Diego, San Diego, CA 92093, USA.
  5. 5 Moores Comprehensive Cancer Center, University of California San Diego, San Diego, CA 92093, USA.

* Corresponding author. Email: ikufareva@ucsd.edu (I.K.); prghosh@ucsd.edu (P.G.)

Editor's summary

ヘテロ三量体Gタンパク質は、GPCRによって活性化されるだけでなく、上皮増殖因子受容体(EGFR)などの受容体チロシンキナーゼによってトランス活性化されることもある。Royらは、GPCR CXCR4とEGFRのクロストークの機構を調べた。質量分析では、EGFに応答してリン酸化されるGαiの残基が同定された。これらの部位を変異させたGαiタンパク質の研究によって、Gαiのリン酸化がその後のCXCR4との共役を妨げ、ある事例では細胞質内のGαiの誤った局在化がその原因となることが明らかになった。まとめると、これらの知見は増殖因子受容体とGPCRのクロストークがGαiのリン酸化のレベルで調整されている可能性を示している。—John F. Foley

要約

異なるシグナル伝達経路が細胞の挙動を調節するために互いにどのように相互作用しているのかは、シグナル伝達の分野における長年の疑問である。増殖因子受容体とGタンパク質共役受容体(GPCR)は、真核生物における2つの主要なシグナル伝達ハブである。この2つがそれぞれ独立したシグナルを伝達する機構についてはすでに広く明らかにされていることから、われわれは、この2つが互いにどのようにクロストークしているかを調べた。リニアイオントラップ質量分析と、細胞ベースの生物物理学的アッセイ、生化学的アッセイ、および表現型アッセイを用いて、上皮増殖因子が少なくと3つの別個の方法で、Gαiのリン酸化を介して、Gi共役GPCR CXCR4による古典的Gタンパク質シグナル伝達に影響することを明らかにした。GαiのαEヘリックスに含まれる2つの残基(チロシン154/チロシン155)をリン酸化模倣変異させると、アゴニストに誘導されるGαiの活性化は抑制され、恒常的なGβγシグナル伝達は促進された。Pループ(セリン44、セリン47、スレオニン48)のリン酸化模倣変異は、Giの活性化を完全に抑制し、それによって増殖因子経路とGPCR経路が完全に分離された。予測どおり、リン酸化イベントのほとんどは、コンフォメーションの安定性、ヌクレオチド結合、Gβγとの会合・解離能など、Gαiタンパク質の本質的な性質に影響しているようだった。一方で、C末端残基チロシン320を標的としたリン酸化模倣変異は、細胞膜からのGαiの誤った局在化を促進した。この局在化は、これまでに特徴づけされていない、Gタンパク質細胞内コンパートメント化を介してGPCRシグナル伝達を抑制する機構である。まとめると、これらの知見は、増殖因子シグナルとケモカインシグナルがリン酸化に依存したGαi調節を介してクロストークする仕組みだけでなく、そのようなクロストークがどのようにシグナルの多様性を生み出している可能性があるかまで解明するものである。

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