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MDM2-p53軸がnorrin/frizzled4シグナル伝達と血液-CNSバリア機能を調節する

The MDM2-p53 axis regulates norrin/frizzled4 signaling and blood-CNS barrier function

Research Article

SCIENCE SIGNALING
8 Jul 2025 Vol 18, Issue 894
DOI: 10.1126/scisignal.adt0983

Jacklyn Levey1, 2, †, Md. Abedin1, †, ‡, Chi Zhang3, †, §, ¶, Emmanuel Odame1, 2, Lingling Zhang1, #, Ha-Neul Jo1, 2, Kaia Douglas4, **, Heidi Roehrich1, Zhe Chen5, Harald J. Junge1, 2, *

  1. 1 Department of Ophthalmology and Visual Neurosciences, University of Minnesota, Minneapolis, MN 55455, USA.
  2. 2 Graduate Program in Molecular, Cellular, Developmental Biology, and Genetics, University of Minnesota, Minneapolis, MN 55455, USA.
  3. 3 Department of Molecular, Cellular, and Developmental Biology, University of Colorado, Boulder, CO 80309, USA.
  4. 4 University of Minnesota, Minneapolis, MN 55455, USA.
  5. 5 Department of Neuroscience, University of Minnesota, Minneapolis, MN 55455, USA.
  6. † These authors contributed equally to this work.
  7. ‡ Present address: Division of Hematology, Mayo Clinic, Rochester, MN 55905, USA.
  8. § Present address: Department of Ophthalmology, Columbia University Irving Medical Center, New York, NY 10027, USA.
  9. ¶ Present address: Zuckerman Mind Brain Behavior Institute, Columbia University, New York, NY 10027, USA.
  10. # Present address: Department of Biology, University of St. Thomas, St. Paul, MN 55105, USA.
  11. ** Present address: Eppley Institute, University of Nebraska Medical Center, Omaha, NE 68198, USA.
  12. * Corresponding author. Email: junge@umn.edu

Editor's summary

複数の種類のがんで腫瘍抑制因子p53量が減少していることから、p53を分解標的とするユビキチンE3リガーゼであるMDM2の阻害薬の開発への関心が高まっている。Leveyらは、内皮細胞中のMDM2除去が、血液-CNSバリアの発達と機能に重要であるnorrinによって調節されるシグナル伝達に影響するかどうかを調べた。生後間もないマウスの内皮細胞のMDM2を遺伝的にノックアウトすると、内皮細胞の増殖が低下し、網膜血管の発達に異常が生じ、norrinシグナル伝達が損なわれた。成体マウスにおいて内皮細胞特異的にMDM2を欠損させると、網膜血管の漏出が引き起こされ、炎症性因子をコードするmRNAの発現が促進された。これらの結果は、MDM2阻害薬による望ましくない副作用で眼球浮腫が起こりうることを示唆している。—Wei Wong

要約

norrinによって誘導される、内皮細胞(EC)における受容体frizzled4を介したβ-カテニン依存性シグナル伝達の活性化は、血液-CNSバリア機能の確立と維持に必要不可欠である。われわれは、この経路がストレス下または疾病状態でどのように調節されるのかを明らかにしようとした。具体的には、2型糖尿病においてEC中の転写因子p53量の増加がCNS血管の漏出と相関することから、内皮血液-CNSバリアにおけるp53の役割を調べた。われわれは、トランスクリプトーム、細胞ベース、およびマウスを用いた遺伝学的な手法によって、p53とその負の制御因子であるMDM2とnorrin/frizzled4シグナル伝達の相互作用を特定した。EC特異的にMdm2を除去したマウスでは、norrin/frizzled4シグナル伝達が低下し、ECの増殖と網膜の血管新生が減少し、血液-網膜バリア機能が破綻したが、これらの作用はすべて、同時にTrp53を欠損させることによって大幅に回復した。p53に応答したnorrin/frizzled4シグナル伝達の減弱とECの増殖阻害は、コンデンシンI複合体の構成要素である非SMCコンデンシンI複合体サブユニットH(NCAPH)の発現量の減少と関連した。この研究は、norrin/frizzled4シグナル伝達の制御因子を同定するとともに、MDM2阻害薬を臨床的に使用すると血液-CNSバリアが損なわれる可能性を示唆するものである。さらに、NCAPHはECにおいてp53の下流エフェクターである可能性があり、norrinシグナル伝達の欠損によって引き起こされる家族性滲出性硝子体網膜症(FEVR)の候補遺伝子である可能性もある。

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