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mTORC1を制御するTSC複合体への成長因子シグナル伝達の進化
Evolution of growth factor signaling to the TSC complex to regulate mTORC1
SCIENCE SIGNALING
8 Jul 2025 Vol 18, Issue 894
DOI: 10.1126/scisignal.adw4165
Kun Wang1, 2, †, Sophie E. Lockwood1, 2, ‡, Brendan D. Manning1, 2, *
- 1 Department of Molecular Metabolism, Harvard T.H. Chan School of Public Health, Boston, MA 02115, USA.
- 2 Department of Cell Biology, Harvard Medical School, Boston, MA 02115, USA.
- * Corresponding author. Email: bmanning@hsph.harvard.edu
- † Present address: Novartis Institutes for Biomedical Research, Cambridge, MA 02139, USA.
- ‡ Present address: Putnam Life Science Consulting and Advisory, Boston, MA 02116, USA.
要約
機構的ラパマイシン標的(mTOR)複合体1(mTORC1)は、細胞成長を刺激する因子(外因性成長因子)と細胞成長に不可欠な因子(細胞内の栄養素とエネルギー)という両方のシグナルを統合している。mTORC1中のプロテインキナーゼmTORの活性化により、細胞成長を駆動するバイオマスの蓄積を全体として刺激する、下流基質のリン酸化が生じる。一方で多くの上流のシグナル(特に成長因子)は、結節性硬化症複合体(TSC)というタンパク質複合体のTSC2サブユニットのリン酸化を誘導することで、mTORC1を制御している。このTSC2は、mTORC1活性化とそれによる細胞成長促進に対する、保存されたブレーキである。TSCタンパク質複合体のクライオ電子顕微鏡による研究から、このようなTSC2のリン酸化制御は、進化的に保存されているコア構造要素の外にあり、これらの構造に含まれる形で解析されていないループ内の残基にほぼ限局して生じていることが明らかにされた。これらのリン酸化に富む無構造ループが後生動物において進化していることは、多様な成長因子によるmTORC1の制御が複雑なボディプランと多様な細胞種の発現に伴って進化し、組織内および異なる組織間での細胞の成長と代謝を調整することになった可能性を示唆している。TSC2のコア構造とは異なり、これらのループには疾患関連のミスセンス変異は認められない。これらの特徴は、TSC2上の制御ループは、多様なシグナルをTSCタンパク質複合体上に収束させてmTORC1を制御することを可能にする進化的変化を受けやすいことを示唆している。