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パーキンソン病に関連するLRRK2変異マウスに対するキナーゼ阻害剤投与による線条体神経保護経路の回復
Restoration of striatal neuroprotective pathways by kinase inhibitor treatment of Parkinson’s disease–linked LRRK2-mutant mice
SCIENCE SIGNALING
1 Jul 2025 Vol 18, Issue 893
DOI: 10.1126/scisignal.ads5761
Ebsy Jaimon1, 2, Yu-En Lin1, 2, Francesca Tonelli2, 3, Odetta Antico2, 3, Dario R. Alessi2, 3, Suzanne R. Pfeffer1, 2, *
- 1 Department of Biochemistry, Stanford University School of Medicine, Stanford, CA, USA.
- 2 Aligning Science Across Parkinson’s (ASAP) Collaborative Research Network, Chevy Chase, MD, USA.
- 3 MRC Protein Phosphorylation and Ubiquitylation Unit, University of Dundee, Dundee, UK.
- * Corresponding author. Email: pfeffer@stanford.edu
Editor's summary
パーキンソン病(PD)に関連するキナーゼLRRK2の変異は、脳の線条体の細胞における繊毛の喪失を引き起こし、黒質のドーパミン作動性ニューロンの生存に不可欠なシグナル伝達回路を阻害する。Jaimonらは、LRRK2変異関連PDの初期段階のマウスモデルでLRRK2阻害剤MLi-2を試験した。3ヵ月間MLi-2を食餌補給すると、線条体ニューロンとアストロサイトにおける繊毛形成と、黒質ドーパミン作動性ニューロンの再生マーカーを増加させる繊毛シグナル伝達依存性神経保護因子の産生が回復した。これらの知見は、MLi-2がLRRK2変異によって引き起こされる疾患に関連する細胞の欠陥に対処することを示しており、患者にとって治療薬となる可能性がある。—Leslie K. Ferrarelli
要約
パーキンソン病は、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)をコードする遺伝子の活性化変異に関連しており、それは線条体のコリン作動性およびパルブアルブミン介在ニューロンとアストロサイトにおける一次繊毛形成を抑制する。その結果、通常はドーパミン作動性ニューロンの生存を支える神経保護性グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)とニュールツリン(NRTN)の産生が減少する。MLi-2は、脳浸透性の選択的LRRK2阻害剤であり、現在、実験段階にある。本稿では、若齢LRRK2変異マウスにMLi-2を3ヵ月間食餌投与したところ、コリン作動性およびパルブアルブミン介在ニューロンとアストロサイトの両方において一次繊毛形成とHedgehogシグナル伝達が回復することを明らかにした。この投与により、ニューロンにおけるHedgehog応答性のGdnfおよびNrtn発現も回復した。脚橋被蓋核のコリン作動性ニューロンでも繊毛が回復しており、患者の運動障害の重症度と繊毛の喪失は相関している。さらに、MLi-2は線条体の微細ドーパミン作動性突起の密度を増加させ、黒質ドーパミン作動性ニューロンにおけるストレスと関連したSonic Hedgehog RNA発現を減少させた。このように、病的なLRRK2誘導性繊毛喪失は有糸分裂後のニューロンおよびアストロサイトにおいて可逆的であり、特異的なLRRK2阻害剤の早期投与が患者に治療効果をもたらす可能性を示唆している。