生理学
銅供給の維持

Physiology
Maintaining Copper Supplies

Editor's Choice

Sci. Signal., 11 May 2010
Vol. 3, Issue 121, p. ec138
[DOI: 10.1126/scisignal.3121ec138]

Elizabeth M. Adler

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

銅は、様々な酵素にとって必須の補因子であり、腸を通して吸収され、肝臓に運ばれて貯蔵される。少量の銅は、循環血液へ動員されて末梢組織に供給さ れる(Culotta参照)。心臓は、銅欠乏に対する感受性が特に高く、銅欠乏は心肥大や循環器機能の他の障害の原因となる。Kimらは、銅輸送体の Ctr1を心臓組織特異的に欠失したトランスジェニックマウス(Ctr1hrt/hrtマウス)を作製し、これらのマウスが、野生型同腹仔と比較して、心臓の銅蓄積量が減少しており、重度の心筋症を示すことを明らかにした。同様に、2ヵ月齢または7ヵ月齢のマウスにおける心臓のCtr1の欠失も、その後の心筋症の発症につながった。しかし、予想外に、Ctr1hrt/hrtマ ウスは、肝臓の銅含有量の減少と、血清銅が増大を示した。さらに、心臓のCtr1を欠失するマウスでは、肝臓および腸のATP7A銅輸送性ATPアーゼの 存在量がかなり増大していた。腸からの銅吸収に役割を果たすことが知られているATP7Aは、これまでのところ肝臓における銅の処理に関連付けられたこと がなく、実際に野生型成体マウスの肝臓におけるATP7Aの存在量は適度であった。ヒト臍静脈内皮細胞またはヒト上皮細胞様細胞株をCtr1hrt/hrtマ ウスに由来する血清で処理すると、対照マウスに由来する血清で処理した細胞と比較して、ATP7Aの存在量の増大が認められ、銅シャペロンCCSの存在量 も増大していた(銅含有量の減少を示唆する)。したがって、著者らは、心臓の銅欠乏は、肝臓および腸におけるATP7Aの存在量の増大をもたらす循環シグ ナルを誘導し、それによって、銅の取込みおよび循環系への動員を亢進させることが可能になると結論付けている。

B.-E. Kim, M. L. Turski, Y. Nose, M. Casad, H. A. Rockman, D. J. Thiele, Cardiac copper deficiency activates a systemic signaling mechanism that communicates with the copper acquisition and storage organs. Cell Metab. 11, 353-363 (2010). [PubMed]

V. Culotta, Speaking from the heart: Systemic copper signaling. Cell Metab. 11, 343-344 (2010). [PubMed]  

E. M. Adler, Maintaining Copper Supplies. Sci. Signal. 3, ec138 (2010).

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