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栄養センシング
輸送との競合
Nutrient Sensing
Competing for Transport
Sci. Signal., 22 June 2010
Vol. 3, Issue 127, p. ec185
[DOI: 10.1126/scisignal.3127ec185]
John F. Foley
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
植物は、窒素源として、および代謝と成長を調節するシグナル伝達分子として硝酸塩を利用する。土壌から側根を経由する硝酸塩の取り込みは、細胞膜結 合硝酸輸送タンパク質NRT1.1に依存する。側根の伸長は、もっぱら植物ホルモンのオーキシンに依存する。NRT1.1は、硝酸イオンの輸送のほかに、 硝酸に依存する側根の伸長にも必要であり、そのおかげで植物は土壌中の新たな硝酸供給源を探し出すことができる。しかし、BeeckmanとFrimlが 考察するとおり、NRT1.1の輸送機能がオーキシン依存的な側根の伸長とどのように共役しているかは不明である。Kroukらは、野生型および NRT1.1欠損型のArabidopsis(シロイヌナズナ)の芽生えを用いた実験により、硝酸濃度が低いと、NRT1.1は側根原基の先端部でのオーキシンの蓄積を妨げ、側根伸長を抑制することを示した。Xenopus(ア フリカツメガエル)の卵母細胞での実験では、NRT1.1はオーキシンを輸送できるが、この輸送能は硝酸濃度が高いと抑制されうることが示された。しか し、オーキシンはNRT1.1の硝酸輸送能にまったく影響しなかった。組織化学的解析では、NRT1.1は、オーキシンが側根先端部から移動して表皮細胞 へと分配される際に通る求基的輸送経路に沿って局在することが示された。そのため著者らは、NRT1.1の輸送機能が栄養センシングと共役するモデルを提 示している。外部の硝酸塩の存在量が少ないと、NRT1.1がオーキシンを側根先端部から運び去るため、側根の伸長は抑制される。しかし、外部の硝酸塩の 存在量が多いと、硝酸塩がNRT1.1との結合に関してオーキシンと競合するため、側根にオーキシンが蓄積されて側根伸長を引き起こし、植物はより多くの 硝酸塩を取り込めるようになる。
G. Krouk, B. Lacombe, A. Bielach, F. Perrine-Walker, K. Malinska, E. Mounier, K. Hoyerova, P. Tillard, S. Leon, K. Ljung, E. Zazimalova, E. Benkova, P. Nacry, A. Gojon, Nitrate-regulated auxin transport by NRT1.1 defines a mechanism for nutrient sensing in plants. Dev. Cell 18, 927-937 (2010). [Online Journal]
T. Beeckman, J. Friml, Nitrate contra auxin: Nutrient sensing by roots. Dev. Cell 18, 877-878 (2010). [Online Journal]
J. F. Foley, Competing for Transport. Sci. Signal. 3, ec185 (2010).