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アポトーシス
カルシウムでブレーキをかける
Apoptosis
Applying the Brakes with Calcium
Sci. Signal., 29 November 2011
Vol. 4, Issue 201, p. ec330
[DOI: 10.1126/scisignal.4201ec330]
John F. Foley
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
N. Khadra, L. Bresson-Bepoldin, A. Penna, B. Chaigne-Delalande, B. Ségui, T. Levade, A.-M. Vacher, J. Reiffers, T. Ducret, J.-F. Moreau, M. D. Cahalan, P. Vacher, P. Legembre, CD95 triggers Orai1-mediated localized Ca2+ entry, regulates recruitment of protein kinase C (PKC) β2, and prevents death-inducing signaling complex formation. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 108, 19072-19077 (2011). [Abstract] [Full Text]
細胞死受容体CD95にリガンドのCD95Lが結合すると、受容体のクラスター形成が起こり、アダプタータンパク質やイニシエーターカスパーゼ(カスパーゼ-8など)の動員のための基盤となるCD95-Capが形成される。その結果生じる細胞死誘導性シグナル伝達複合体(DISC)はアポトーシスを惹起する。Khadraらは、CD95誘導細胞死におけるCa2+の役割について検討し、CD95Lがリンパ球とT細胞株において、二相性のCa2+応答を促すことを見いだした。第一相は細胞内ストアからのCa2+放出からなるのに対して、第二相には細胞膜のOrai1が媒介するストア作動性Ca2+流入が関与する。CD95依存性Ca2+流入を阻害すると、対照細胞に比べてDISC形成度が亢進し、カスパーゼ-8のプロセシングが亢進した。単一細胞イメージングによって、CD95LはCD95-Cap領域へのOrai1の移動を促進し、その結果Ca2+濃度が局所的に上昇することが示された。Orai1のドミナント・ネガティブ(DN)型の発現によって、対照細胞と比べてCa2+流入は低下したが、DISC形成とカスパーゼ-8プロセシングの程度は亢進した。CD95LはサイトゾルからCD95-CapへのプロテインキナーゼCβ2(PKCβ2)の動員を促進し、そこでPKCβ2はDISCと免疫共沈降した。DN Orai1の発現によってPKCβ2のDISCへの動員が阻止され、PKCβ2のノックダウンによってCD95媒介アポトーシスに対する細胞の感受性が亢進した。CD95Lで処理し、次にCD95ブロッキング抗体で処理した細胞において、各時点でのミトコンドリア膜電位を測定した実験によって、細胞死の速度はOrai1の過剰発現によって遅延し、DN Orai1の発現によって亢進することが示された。以上の結果から、著者らは、Orai1媒介Ca2+シグナル伝達は、細胞死にコミットする前の「運命決定」過程の一環として、CD95シグナル伝達を一時的に抑制すると提唱している。
J. F. Foley, Applying the Brakes with Calcium. Sci. Signal. 4, ec330 (2011).