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オートファジー
甘いシグナル

Autophagy
Sweet Signals

Editor's Choice

Sci. Signal., 21 February 2012
Vol. 5, Issue 212, p. ec54
[DOI: 10.1126/scisignal.2002973]

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

T. L. M. Thurston, M. P. Wandel, N. von Muhlinen, Á. Foeglein, F. Randow, Galectin 8 targets damaged vesicles for autophagy to defend cells against bacterial invasion. Nature 482, 414-418 (2012). [PubMed]

J. Huang, J. H. Brumell, A sweet way of sensing danger. Nature 482, 316-317 (2012). [Online Journal]

ネズミチフス菌(Salmonella enterica serovar Typhimurium)は、細胞に感染するとき、サルモネラ含有液胞(Salmonella-containing vacuole, SCV)と呼ばれる小胞内に入り込み、ここから宿主のサイトゾルにエフェクタータンパク質を分泌して免疫応答を調節する。免疫活性はSCVに損傷を与え、一部の細菌はサイトゾルへと逃れて複製することができる(Huang and Brumellによるcommentary参照)。SCVの損傷は、p62やNDP52などのオートファジー装置の構成要素を刺激して曝露された細菌に向かわせ、その結果としてSCV周囲にオートファゴソームが形成されて、細菌が破壊される。Thurstonらはネズミチフス菌が感染したHeLa細胞を用いて、オートファジー活性化におけるガレクチン類(細胞外で糖鎖に結合することが最もよく知られているレクチン)の役割について調べた。ネズミチフス菌の約10%は、感染から1時間以内に多様なガレクチンによって被覆され、リソソームと結合していた。ガレクチン8のノックダウン細胞では、対照細胞に比べて細菌の増殖が亢進していたが、他のガレクチン類のノックダウンの場合にはそのような現象は見られなかった。ガレクチン8はin vitroでNDP52と物理的に会合しており、感染HeLa細胞内の多くのSCVにはガレクチン8とNDP52の両方が含まれていた。損傷SCVへのガレクチン8の動員は、ネズミチフス菌の成分には依存せず、小胞膜内の宿主糖鎖の曝露に依存していた。実際に、非感染細胞においてエンドソームやリソソームが浸透圧損傷を受けることでもガレクチン8の動員がおこり、この動員はガレクチン8のN末端糖鎖認識ドメインに依存していた。ガレクチン3、8、9も、他のタイプの細菌が感染した細胞ではその細菌上に蓄積した。ガレクチン8によって被覆された細菌へのNDP52の結合は感染初期に起こるのに対して、ユビキチン化を受けた細菌へのNDP52への結合(オートファジー応答を誘発することが以前からわかっている機構)は感染の後期に起こった。これらのデータを総合すると、ガレクチン8は、小胞膜の損傷を感知してオートファジー応答を促進することによって、細胞の細菌感染に対する初期の代替的な応答を引き起こすことが示唆される。

J. F. Foley, Sweet Signals. Sci. Signal. 5, ec54 (2012).

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