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神経科学
ミトコンドリアのグルタミン酸受容体による神経保護

Neuroscience
Neuroprotective Mitochondrial Glutamate Receptors

Editor's Choice

Sci. Signal., 23 October 2012
Vol. 5, Issue 247, p. ec272
[DOI: 10.1126/scisignal.2003712]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

A. S. Korde, W. F. Maragos, Identification of an N-methyl-D-aspartate receptor in isolated nervous system mitochondria. J. Biol. Chem. 287, 35192-35200 (2012). [Abstract] [Full Text]

N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)型のグルタミン酸受容体は、シナプスでの生理的な事象と病的な事象の両方にかかわっており、これらの受容体が過剰に活性化されるとカルシウム過負荷と興奮毒性が生じる。KordeとMaragosは、ラット脳から単離ミトコンドリアを調製し、これらの標品がグルタミン酸アゴニストまたはNMDAアゴニストに対して応答して、このようなリガンドがない場合に比べてミトコンドリアによるカルシウムの取込みが増大することを明らかにした。精製したミトコンドリア標品または海馬切片の電子顕微鏡観察によって、NMDA受容体のNR2aサブユニットのミトコンドリアへの結合が検出され、ミトコンドリア分画標品のウェスタンブロットによって、NR1とNR2aサブユニットがミトコンドリア内膜に結合していることが示された。NR1サブユニットがノックダウンされている神経細胞株であるGT1-7から調製したミトコンドリアは、基礎的なカルシウムの取込み(NMDAの添加によって亢進されない)を示すのみであった。対照的に、ミトコンドリア特異的にNR1とNR2aを発現させた細胞では、ATP産生が増大し、細胞毒性濃度のグルタミン酸による細胞死は低下した。このようなNMDA受容体が標的化された細胞のミトコンドリアはカルシウム取込みの亢進を示すことから、カルシウム緩衝能の亢進が細胞の保護作用に寄与する可能性が示唆された。NMDA受容体はシナプスの細胞膜には多量に含まれ、ミトコンドリアにおける存在量は少ない。しかし、これらのデータは、ミトコンドリアのNMDA受容体がミトコンドリアのカルシウム緩衝能に関して何らかの役割を果たしている可能性を示唆する。

N. R. Gough, Neuroprotective Mitochondrial Glutamate Receptors. Sci. Signal. 5, ec272 (2012).

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2012年10月23日号

Editor's Choice

神経科学
ミトコンドリアのグルタミン酸受容体による神経保護

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