- ホーム
- クラスIヒストン脱アセチル化酵素の新たな内因性調節因子
クラスIヒストン脱アセチル化酵素の新たな内因性調節因子
New Endogenous Regulators of Class I Histone Deacetylases
Sci. Signal., 5 January 2010
Vol. 3, Issue 103, p. pe1
[DOI: 10.1126/scisignal.3103pe1]
Antonella Riccio*
MRC Laboratory for Molecular and Cell Biology and Department of Neuroscience, Physiology and Pharmacology, University College London, London WC1E 6BT, UK.
* Contact information. E-mail: a.riccio@ucl.ac.uk.
要約:真核生物における遺伝子発現は、ヒストンおよびDNAのエピジェネティックな変化に依存している。クラス Iヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は、ヒストンおよび他の核内タンパク質からアセチル基を除去することによって、クロマチン凝縮や転写抑制を誘発す る酵素である。HDACは、いくつかの細胞内経路の活性化後に翻訳後修飾を受ける酵素の大きなファミリーに属する。しかし、核HDACの機能を変化させる 環境刺激についてはほとんどわかっていない。脂質のスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)がHDAC1およびHDAC2の活性を阻害することを示す新たな 証拠が示された。S1PとS1P合成酵素であるスフィンゴシンキナーゼ2(SphK2)は、いずれもHDAC1およびHDAC2を含むコリプレッサー複合 体内に集積する。S1Pは細胞外刺激に応じて核内で合成される数少ない内因性HDAC阻害物質の一つであり、エピジェネティックな修飾に関与するはじめて の核脂質である。in vivoでHDAC活性を調節する内因性分子の発見は、がんや神経変性疾患など多数のヒト疾患に対する新たな治療方法の開発に影響を与える。
A. Riccio, New Endogenous Regulators of Class I Histone Deacetylases. Sci. Signal. 3, pe1 (2010).