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Wnt/β-カテニンおよびMAPKシグナル伝達:異なる戦場での敵味方

 Wnt/β-Catenin and MAPK Signaling: Allies and Enemies in Different Battlefields

Perspectives

Sci. Signal., 10 April 2012
Vol. 5, Issue 219, p. pe15
[DOI: 10.1126/scisignal.2002921]

Daniele Guardavaccaro and Hans Clevers*

Hubrecht Institute-KNAW and University Medical Center Utrecht, Uppsalalaan 8, 3584 CT Utrecht, Netherlands.

* Corresponding author. E-mail: h.clevers@hubrecht.eu

要約:Science Signalingに発表された2報の論文は、がんにおけるWnt/β-カテニンシグナル伝達とマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナル伝達の間の広範なクロストークを明らかにしている。どちらの研究も、これまで知られていなかったこれら2つのシグナル伝達経路の間のつながりについて記述しているが、Wnt/β-カテニンシグナル伝達とMAPKシグナル伝達の間の関係は特定の細胞状況に依存する。実際に、メラノーマでは、過剰活性化したMAPKシグナル伝達がWnt/β-カテニンシグナル伝達カスケードを下方調節し、それによって2つのシグナル伝達経路の間に負のクロストークを確立している。対照的に、結腸直腸がんでは、Wnt/β-カテニン経路の刺激によって、Ras安定化を介してMAPK経路が活性化されるが、これは正のクロストークの1例である。さらに、Wnt/β-カテニンシグナル伝達の活性化は状況に依存した機能を有し、腫瘍の増殖に対する反対の作用の引き金となる。メラノーマでは、Wnt/β-カテニンシグナル伝達の異常活性化は、プログラム細胞死を促進することによって腫瘍抑制機能を有するのかもしれない。対照的に、消化管では、Wnt/β-カテニンシグナル伝達によって悪性形質転換が駆動される。このように、すべてのがんに対してWnt/β-カテニン経路を標的とする単一の正しい方法というのは存在しない。

D. Guardavaccaro, H. Clevers, Wnt/β-Catenin and MAPK Signaling: Allies and Enemies in Different Battlefields. Sci. Signal. 5, pe15 (2012).

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