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老いた狐の新しいトリック:DNA損傷応答とゲノム安定性に対するTGFβの影響

New tricks for an old fox: Impact of TGFβ on the DNA damage response and genomic stability

Reviews

Sci. Signal., 2 September 2014
Vol. 7, Issue 341, p. re5
DOI: 10.1126/scisignal.2005474

Mary Helen Barcellos-Hoff1,* and Francis A. Cucinotta2,*

1 Department of Radiation Oncology, New York University School of Medicine, 566 First Avenue, New York, NY 10016, USA.
2 Health Physics and Diagnostic Sciences, University of Nevada, Las Vegas, 4505 Maryland Parkway, Box 453037, Las Vegas, NV 89154-3037, USA.

* Corresponding author. E-mail: barcem01@nyumc.org (M.H.B.-H.); francis.cucinotta@unlv.edu (F.A.C.)

要約 トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)は、細胞増殖のよく知られた主要制御分子であり、組織恒常性の維持にきわめて重要な因子である。TGFβは、伝統的に、発がんの初期段階で機能する腫瘍抑制因子として定義されているが、逆説的に、確立されたがんでは腫瘍促進因子として機能する。あまり研究されていないのは、DNA損傷応答(DDR)への関与を通した、ゲノム安定性の維持におけるその役割である。マウス上皮においてTgfb1を欠損させると、遺伝子増幅、異数性、および中心体異常で測定されるゲノムの不安定性(GIN)が増大する。同様に、ヒト上皮細胞において、TGFβリガンドを欠乏させる、あるいは、TGFβ経路シグナル伝達を阻害すると、GINは増大する。その後の研究から、TGFβ欠乏により、放射線照射後の細胞生存が減弱し、DNA二重鎖切断により迅速に活性化されるセリン/スレオニンプロテインキナーゼであるataxia telangiectasia mutated(ATM)の活性が著しく低下することでDDR活性化が損なわれることが実証された。SMAD転写因子は、DDRにおけるTGFβとATM経路の間のクロストークの中間体である。最近の研究から、ヒト線維芽細胞と上皮細胞において、SMAD2とSMAD7が、それぞれATMまたはTGFβ I型受容体に依存する様式で、DDRに関与していることが示された。DDRとGIN抑制におけるTGFβの役割を理解することは、腫瘍形成における一見逆説的なその役割を理解するために重要であり、よって、DNA損傷誘導療法に対する応答を改善する治療上の意義を有する。

M. H. Barcellos-Hoff and F. A. Cucinotta, New tricks for an old fox: Impact of TGFβ on the DNA damage response and genomic stability. Sci. Signal. 7, re5 (2014).

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