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近位尿細管細胞の頂端膜機能および腎臓による栄養素の回収のVPS34依存性制御

VPS34-dependent control of apical membrane function of proximal tubule cells and nutrient recovery by the kidney

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SCIENCE SIGNALING
29 Nov 2022 Vol 15, Issue 762
DOI: 10.1126/scisignal.abo7940

Markus M. Rinschen1, 2, 3, 4, 5, Jennifer L. Harder6, Madalina E. Carter-Timofte3, Luis Zanon Rodriguez7, Carmen Mirabelli8, Fatih Demir3, Naziia Kurmasheva3, Suresh K. Ramakrishnan9, Madlen Kunke7, Yifan Tan3, Anja Billing3, Eileen Dahlke7, Alexey A. Larionov9, Wibke Bechtel-Walz10, Ute Aukschun10, Marlen Grabbe10, Rikke Nielsen3, Erik I. Christensen3, Matthias Kretzler6, Tobias B. Huber2, Christiane E. Wobus8, David Olagnier3, Gary Siuzdak1, Florian Grahammer2, *, †, Franziska Theilig7, 9, *, †

  1. 1 Scripps Center for Metabolomics, Scripps Research, La Jolla, CA 92037, USA.
  2. 2 III. Department of Medicine, University Medical Center Hamburg-Eppendorf, 20251 Hamburg, Germany.
  3. 3 Department of Biomedicine, Aarhus University, 8000 Aarhus, Denmark.
  4. 4 Department II of Internal Medicine and Center for Molecular Medicine, University of Cologne, 50937 Cologne, Germany.
  5. 5 Aarhus Institute for Advanced Studies, Aarhus University, 8000 Aarhus, Denmark.
  6. 6 Division of Nephrology, Department of Internal Medicine, University of Michigan Medical School, Ann Arbor, MI 48109, USA.
  7. 7 Department of Anatomy, Christian-Albrechts-University Kiel, 24118 Kiel, Germany.
  8. 8 Department of Microbiology and Immunology, University of Michigan Medical School, Ann Arbor, MI 48109, USA.
  9. 9 Department of Medicine, University of Fribourg, 1700 Fribourg, Switzerland.
  10. 10 IV Department of Medicine and Faculty of Medicine, University Medical Center Freiburg, 79110 Freiburg, Germany.

* Corresponding author. Email: f.grahammer@uke.de (F.G.); f.theilig@anat.unikiel.de (F.T.)

† These authors contributed equally to this work.

栄養素とウイルスに対する腎臓の門番

腎臓は血液をろ過し、近位尿細管の内壁細胞におけるエンドサイトーシスおよび能動輸送を介して栄養素を保持している。Rinschenらはこのプロセスが、膜タンパク質の小胞輸送およびエンドサイトーシス選別に関与する脂質キナーゼである「VPS34」により、どのように制御されているかを検討した。マルチオミクス解析から、マウス近位尿細管細胞におけるVPS34の欠損により細胞表面の栄養トランスポーターの存在量が減少すること、そしてこれが脂質およびタンパク質の尿中排泄の増加と関連していることが明らかになった。加えて、細胞表面のウイルス侵入に係わる受容体(ACE2など)の存在量が減少していた。それに応じて、培養下の近位尿細管細胞およびヒト腎臓オルガノイドをVPS34阻害剤で処理したとき、SARS-CoV-2の侵入が低下した。このようにVPS34の阻害は、栄養素の保持の制限が臨床的に有益となる疾患(腎がん、糖尿病など)の治療、または腎臓のウイルス感染の抑制に利用できるかもしれない。

要約

脂質キナーゼVPS34はオートファジー、エンドサイトーシスおよび代謝を調整し、がんおよび代謝疾患との関与が示唆されている。また、腎臓の近位尿細管は、脂肪酸、アミノ酸、糖およびタンパク質などの栄養素の再吸収を調節する主要な代謝器官である。本稿でわれわれは、近位尿細管細胞において誘導性欠損を有するマウスを用いたメタボロミクス、プロテオミクスおよびホスホプロテオミクス解析と、機能イメージングおよび超解像イメージングアッセイを組み合わせることで、VPS34が近位尿細管のメタボロームを制御していることを明らかにした。VPS34の枯渇は飲作用およびオートファジーを阻害することに加え、膜のエキソサイトーシスを誘導し、膜の適切なリサイクリングおよび脂質の保持に必要なレトロマー複合体の存在量を減少させることで、栄養供給とバイオマスの低下をもたらした。オミクスデータを腎細胞のメタボロミクスモデルに組み込むことで、VPS34の欠損によってβ-酸化が増加し、糖新生が減少し、エネルギー消費のためのグルタミン使用が亢進することが示された。さらにこれらのオミクスデータセットから、VPS34の欠損が、管腔側に局在しているACE2などのウイルス受容体の存在量を減少させるなどの抗ウイルス応答を引き起こすことが明らかになった。ヒト腎臓オルガノイドおよび培養下の近位尿細管細胞においてVPS34を阻害したとき、SARS-CoV-2感染が抑制された。したがってこれらの結果は、腎臓の近位尿細管細胞でVPS34がエンドサイトーシス、栄養素の輸送、オートファジーおよび抗ウイルス応答を調整していることを示している。

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