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Notchシグナル伝達
Serrateを介するシス阻害
Notch Signaling
Serrate-Mediated Cis-Inhibition
Sci. Signal., 23 April 2013
Vol. 6, Issue 272, p. ec90
[DOI: 10.1126/scisignal.2004263]
Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
R. J. Fleming, K. Hori, A. Sen, G. V. Filloramo, J. M. Langer, R. A. Obar, S. Artavanis-Tsakonas, A. C. Maharaj-Best, An extracellular region of Serrate is essential for ligand-induced cis-inhibition of Notch signaling. Development 140, 2039-2049 (2013). [Abstract] [Full Text]
膜貫通型受容体であるNotchが、近傍細胞(シグナルを送る細胞)上に存在するその膜貫通型リガンドの1つと結合することでプロテアーゼによる切断が生じ、膜からNotch細胞内ドメインが放出される。これが核内に侵入して、シグナルを受容する細胞で標的遺伝子の発現を促進することができる。しかし、同一細胞に存在するリガンドにNotchが結合すると、シグナル伝達は阻害される。Notchシグナル伝達のトランス活性化は広く記述されているものの、かなり多くのリガンドと受容体に依存していること、およびリガンドの細胞外ドメインのみが必要であること以外、シス阻害の根底にある機構は明確ではない。Flemingはキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)でNotchリガンドであるSerrate(Ser)の細胞外ドメインを調べ、シス阻害に必要な部位を同定した。そこで著者らは欠失解析を行い、細胞外ドメイン内の上皮増殖因子様の反復配列14ヵ所のうち3ヵ所(EGFリピート4〜6)が、Serを介するシス阻害に必要であることを実証した。しかしこの配列は、in vivoの翅パターン形成アッセイにおいて、Serを介するトランス活性化には重要でないことが示された。EGFリピート4〜6は、細胞内ドメインを欠くSerの形式によって示されるドミナントネガティブ活性にも必須であった。EGFリピート4〜6を欠損させたとき、Serの量および細胞内分布、また、シグナルを送る細胞によるトランス活性化で生じるその内在化にも影響しなかった。in vivoアッセイでは、可溶型のEGFリピート4〜6がNotchシグナル伝達に影響せず、したがってこの領域はシス阻害に不可欠であるものの、これだけではシス阻害の媒介に十分でなかった。培養したハエS2細胞を用いた拮抗アッセイでは、Notchへの結合について、Notchと同じ細胞上に存在するSerが他の細胞上のSerと拮抗する一方、EGFリピート6を欠損しているSer突然変異体は、Notchへの結合についてcisにおいて拮抗できなかった。Notchシグナル伝達が一役を担っている多くの発生段階では、細胞は当初発生的に同等であり、受容体とリガンドの両方を生成している。その後の細胞間の相互作用により、シグナルを送る細胞と受容する細胞の種類が出現する。これらの知見は、このプロセスで主要な役割を果たすと考えられるシス阻害を理解するための、重要な1ステップである。
A. M. VanHook, Serrate-Mediated Cis-Inhibition. Sci. Signal. 6, ec90 (2013).