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生理学
1遺伝子、2経路による筋適応度

Physiology
One Gene, Two Paths to Muscle Fitness

Editor's Choice

Sci. Signal., 1 January 2013
Vol. 6, Issue 256, p. ec1
[DOI: 10.1126/scisignal.2003914]

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

J. L. Ruas, J. P. White, R. R. Rao, S. Kleiner, K. T. Brannan, B. C. Harrison, N. P. Greene, J. Wu, J. L. Estall, B. A.Irving, I. R. Lanza, K. A. Rasbach, M. Okutsu, K. Sreekumaran Nair, Z. Yan, L. A. Leinwand, B. M. Spiegelman, A PGC-1α isoform induced by resistance training regulates skeletal muscle hypertrophy. Cell 151, 1319–1331 (2012). [PubMed]

ウェイトリフティングなどの筋力トレーニングには、健康上の重要な効多数の利点がある。筋量と筋力の維持は、インスリン様増殖因子1(IGF1)経路およびミオスタチン経路による調節を受ける。エネルギー代謝に関わる遺伝子の転写コア口ベーターであるPGC-1α(ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体γ共役因子)は運動によって誘導され、筋持久力を改善する。Ruasらは、Pgc-1α遺伝子の第2プロモーターにより生成されるPGC-1αのアイソフォームを同定し、PGC-1α4と命名した。マウスの骨格筋と褐色脂肪ではPGC-1α4とPGC-1α1(旧、PGC-1α)の両方のメッセンジャーRNA(mRNA)が検出された。しかし、筋力トレーニングや持久運動に応答してmRNAが増大するPGC-1α1とは異なり、骨格筋のPGC-1α4のmRNAは、筋力ベースの運動を行っているヒトでのみ増加した。転写解析によって、PGC-1α4は初代培養した筋管細胞において、PGC-1α1によって調節されるものとは明らかに異なる遺伝子発現プロファイルを生じさせることが確認された。PGC-1α4を過剰発現している初代培養筋管細胞では、IGF1シグナル伝達経路に働く遺伝子のmRNA量(特にIGF1)が増大しているのに対して、筋のタンパク質の合成とサイズの負の調節因子であるミオスタチンのmRNA量は減少していた。IGF1とミオスタチンに関連する調節性クロマチン領域は、それぞれアセチル化およびメチル化されていることから、PGC-1α4がクロマチン修飾因子を誘導して遺伝子発現を調節する可能性が示された。in vitroとin vivoの両方のモデルで、IGF1経路による肥大の媒介に関してPGC-1α4が重要な役割を果たすことが裏付けられた。βアドレナリン作動薬のクレンブテロールは、筋管細胞において肥大およびPGC-1α4をコードするmRNAを強力に誘導した。IGF1受容体の阻害は、PGC-1α4を過剰発現する培養筋管細胞の肥大応答を抑制した。対照動物で後肢筋肉の委縮を誘導する廃用性プロトコルによって生じる筋肉の委縮は、PGC-1α4の過剰発現により抑制された。さらに、筋特異的ミオゲニンプロモータからPGC-1α4を発現しているトランスジェニックマウス(Myo-PGC-1α4)では、筋肉中のPGC-1α4 mRNA量が増大し、筋量と筋力が増加し、脂肪沈着量が減少した。Myo-PGC-1α4マウスの筋肉ではミオスタチンmRNAが減少し、SMADのリン酸化(ミオスタチンシグナル伝達のマーカー)も低下していた。Lewis肺がん細胞の接種後の腫瘍増殖についてMyo-PGC-1α4マウスは野生型と差がなかったが、筋消耗、疲労、および耐糖能障害を示し、これらすべての特性はがんの悪液質と関係していた。これらの知見から、老化、がん、および筋ジストロフィーにおける筋量・筋肉維持の治療的な調整のための、新たな潜在的標的が導入された。

L. K. Ferrarelli, One Gene, Two Paths to Muscle Fitness. Sci. Signal. 6, ec1 (2013).

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