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細胞生物学
糖でストレスを抑える

Cell Biology
Preventing Stress with Sugar

Editor's Choice

Sci. Signal., 1 April 2014
Vol. 7, Issue 319, p. ec83
[DOI: 10.1126/scisignal.2005319]

Jason D. Berndt

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

M. S. Denzel, N. J. Storm, A. Gutschmidt, R. Baddi, Y. Hinze, E. Jarosch, T. Sommer, T. Hoppe, A. Antebi, Hexosamine pathway metabolites enhance protein quality control and prolong life. Cell 156, 1167–1178 (2014). [PubMed]

Z. V. Wang, Y. Deng, N. Gao, Z. Pedrozo, D. L. Li, C. R. Morales, A. Criollo, X. Luo, W. Tan, N. Jiang, M. A. Lehrman, B. A. Rothermel, A.-H. Lee, S. Lavandero, P. P. A. Mammen, A. Ferdous, T. G. Gillette, P. E. Scherer, J. A. Hill, Spliced x-box binding protein 1 couples the unfolded protein response to hexosamine biosynthetic pathway. Cell 156, 1179–1192 (2014). [PubMed]

L. Vincenz, F. U. Hartl, Sugarcoating ER stress. Cell 156, 1125–1127 (2014). [PubMed]

小胞体(ER)機能障害は、DNA結合タンパク質であるx-ボックス結合タンパク質1の活性スプライスアイソフォーム(XBP1s)によるERストレス応答タンパク質をコードする遺伝子の転写活性化を含むERストレス応答を誘導する。他の役割のうち、ERにおけるタンパク質のN-結合グリコシル化は、正常なフォールディングに必要とされるのに対し、核および細胞質タンパク質のO-結合グリコシル化は、その機能を変化させる。ヘキソサミン生合成経路は、ブドウ糖をN-およびO-結合グリコシル化両方の前駆体であるウリジン二リン酸-N-アセチルグルコサミン(UDP-GlcNAc)に変換させる。Wangらは、虚血再灌流誘導性心外傷のマウスモデルにおいて、再灌流された心臓ではタンパク質のO-GlcNAc修飾およびXbp1s、ERストレス応答シャペロンタンパク質、ヘキソサミン経路酵素の存在量が増加することを発見した。ヘキソサミン経路酵素をコードする遺伝子のいくつかは、プロモーターにXbp1s結合部位を持っており、過剰発現されたXbp1sは、ヘキソサミン経路の律速酵素をコードするGFAT1に結合し、その発現を増加させた。マウスにおけるXbp1sの心臓特異的過剰発現は、フリーのUDP-GlcNAcの存在量およびタンパク質のO-GlcNAc修飾を増加させたのに対し、心臓におけるXbp1sの発現抑制は虚血再灌流誘導性外傷を悪化させた。GFAT1の阻害は、ex vivo心臓および培養筋細胞虚血再灌流モデルにおいてXbp1s過剰発現の心保護作用を抑制したのに対し、外因性UDP-GlcNAcの使用あるいはGFAT1の過剰発現は、Xbp1sをノックダウンした培養筋細胞で虚血再灌流誘導性細胞死を減らした。このように、ヘキソサミン経路はERストレス応答の下流で働き、虚血再灌流による心外傷を制限する。老化は、ERの恒常性崩壊を含む細胞ストレスと関係している。Denzelらは、線虫(Caenorhabditis elegans)において、N-結合グリコシル化を阻害しERストレスおよび細胞死を引き起こすツニカマイシン曝露に対する抵抗性を与えるgfat1の3つの対立遺伝子を同定した。遺伝学的およびsiRNA解析は、これらの対立遺伝子が、優性の機能獲得型変異であることを示し、gfat1を過剰発現する線虫もツニカマイシンにより誘導される致死性に対する抵抗性を示した。gfat1突然変異線虫は、フリーのUDP-HexNAc(UDP-GlcNAcおよびUDP-N-アセチルグルコサミンのプール)の存在量を増加させ、線虫に外因性のGlcNAcあるいはGlcNAcを添加するとツニカマイシンにより誘導される致死性を阻害した。外因性のGlcNAcを与えた線虫あるいはgfat1突然変異を伴う線虫は、ERにおけるミスフォールドした過剰発現突然変異タンパク質の凝集が減った。gfat1突然変異あるいはgfat1過剰発現を伴う線虫、あるいは適量の外因性GlcNAcを与えられた線虫では、ツニカマイシン非存在下で寿命が延びた。この作用は細胞ストレスに応答するFOXO経路など他の長寿経路には非依存的であったが、ERストレス応答関連遺伝子xbp1およびire1に依存的であった。xbp1あるいはire1のノックダウンはgfat1突然変異のミスフォールドタンパク質凝集抑制能を阻害した。さらに、gfat1突然変異あるいは外因性GlcNAcは、ERストレス応答に関与するもう一つの経路であるER関連タンパク質分解(ERAD)に関与するタンパク質をコードする遺伝子の発現を増加させた。ERAD関連遺伝子のノックダウンもまた、gfat1突然変異の寿命延長能を阻害した。このように、ERストレスとヘキソサミン生合成のクロストークは、変性疾患におけるヘキソサミン代謝物質に対する治療適用の可能性を示唆した(VincenzおよびHartl参照)。

J. D. Berndt, Preventing Stress with Sugar. Sci. Signal. 7, ec83 (2014).

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