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がん
MAPKのメチル化はRASシグナル伝達を増強する

Cancer
MAPK Methylation Potentiates RAS Signaling

Editor's Choice

Sci. Signal., 17 June 2014
Vol. 7, Issue 330, p. ec162
[DOI: 10.1126/scisignal.2005593]

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

P. K. Mazur, N. Reynoird, P. Khatri, P. W. T. C. Jansen, A. W. Wilkinson, S. Liu, O. Barbash, G. S. Van Aller, M. Huddleston, D. Dhanak, P. J. Tummino, R. G. Kruger, B. A. Garcia, A. J. Butte, M. Vermeulen, J. Sage, O. Gozani, SMYD3 links lysine methylation of MAP3K2 to Ras-driven cancer. Nature 510, 283–287 (2014). [PubMed]

RASへの変異は多くのがん、特に膵管腺がん(PDAC)でよくみられる。しかしながら、RASを直接治療標的とするのは困難である。翻訳後修飾の異常が、多くのがんに寄与する因子として浮上しており、ヒストンリジンメチルトランスフェラーゼ(KMT)の阻害は見込みがある治療戦略である。Mazurらは、KMT SMYD3(SETおよびMYNDドメイン含有タンパク質3)の活性阻害が、PDACおよび肺腺がんにおけるRASによるシグナル伝達を抑えることを発見した。KMTをコードする遺伝子のヒトPDACにおける発現アレイでは、SMYD3の発現が最も増加していた。ヒトおよびマウスの両方由来の組織において、SMYD3の存在量は、膵臓および肺の腺がんの発症および進行と共に増加していた。SMYD3のノックダウンは、培養ヒト肺腺がんあるいはPDAC細胞の増殖を低下させ、PDACゼノグラフトの増殖も低下させた。Smyd3ノックアウトマウスとKras変異の条件的ノックインマウスの交雑(KrasG12D:Smyd3KO)により、膵臓におけるSMYD3の欠失が炎症誘導性の腫瘍性病変のin vivoでの発症およびex vivoでの管異形成を妨げることが示された。肺において、Smyd3ノックアウトは腺腫の発症に影響しなかったが、腺腫の腺がんへの進行を妨げた。KrasG12D:Smyd3KOマウスに触媒能力のないSMYD3を相補しても、KrasG12Dマウスのような腫瘍増殖および進行はみられなかった。KrasG12D:Smyd3KOマウスでは、RASシグナル伝達の下流仲介因子である細胞外シグナル制御キナーゼ1および2 (ERK1/2)のリン酸化が、肺および膵臓組織の両方においてKrasG12Dマウスと比べて減少していた。ヒト肺および膵臓腫瘍におけるSMYD3の大部分は核には存在せず、ヒストンに対するメチル化活性が低いことから、メチルトランスフェラーゼ活性が細胞質タンパク質を標的としてRASシグナル伝達を促進する可能性が示唆された。タンパク質アレイによりマイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼキナーゼ2(MAP3K2)がSMYD3の基質候補として同定された。in vitroアッセイにより、細胞で検出された修飾と同様にSMYD3がMAP3K2のLys260をメチル化することが示された。MAP3K2のメチル化はKrasG12D:Smyd3KOマウスの肺がん生検では減少していた。SMYD3あるいはMAP3K2をノックダウンした肺および膵臓がん細胞は、野生型SMYD3あるいはMAP3K2のK260A変異体で相補することにより、成長因子や結成刺激に応答したERK1/2の活性化を回復したが、触媒不活型SMYD3を用いた相補では回復しなかった。定量プロテオミクススクリーニングで検出されたようにSMYD3により媒介されるMAP3K2のLys260のメチル化は、PP2Aホスファターゼ複合体の構成因子の結合を阻害し、ウェスタンブロットで検出されたいくつかの下流標的に及ぼすMAP3K2の活性を増強した。PP2A阻害剤で処理されたKrasG12D:Smyd3KOマウスでは、KrasG12Dマウスと同様に腫瘍が発症し、進行した。これらの発見から、MAP3K2のリジンメチル化がRASシグナル伝達を促進し、SMYD3がRAS変異型がんにおける治療標的候補となることが示された。

L. K. Ferrarelli, MAPK Methylation Potentiates RAS Signaling. Sci. Signal. 7, ec162 (2014).

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2014年6月17日号

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