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がん
シグナル伝達の知識から個別化治療まで

Cancer
From signaling knowledge to personalized therapy

Editor's Choice

Sci. Signal., 10 March 2015
Vol. 8, Issue 367, p. ec52
DOI: 10.1126/scisignal.aab0676

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

J. Montero, K. A. Sarosiek, J. D. DeAngelo, O. Maertens, J. Ryan, D. Ercan, H. Piao, N. S. Horowitz, R. S. Berkowitz, U. Matulonis, P. A. Jänne, P. C. Amrein, K. Cichowski, R. Drapkin, A. Letai, Drug-induced death signaling strategy rapidly predicts cancer response to chemotherapy. Cell 160, 977–989 (2015). [PubMed]

要約  科学編集長Michael Yaffeが指摘しているように、がんを有効に治療するわれわれの能力に欠けているものは、患者のがん細胞内でのシグナル伝達経路に関する情報である。細胞のアポトーシスによる死滅を促進または「プライミング」する刺激への感受性を調節するBH3ドメインをもつ、BCL-2ファミリータンパク質の知識を用いて、Moneteroらは、ダイナミックBH3プロファイリング(Dynamic BH3 Profiling:DBP)と呼ばれる方法を開発し、がん細胞、細胞株、あるいは患者腫瘍細胞において、種々の化学療法剤に反応したプライミングを評価した。特定の薬剤に対する耐性または感受性が判明している非小細胞肺がん細胞株を用いて行った初期の研究では、薬剤曝露後に投与したアポトーシス促進性BH3ペプチドによって引き起こされるミトコンドリア膜透過性の量から評価された、特定の薬剤が細胞を刺激して死滅させる能力と、数日後に起こる細胞死との正の相関が示された。DBPによって、乳がん細胞株や複数の血液がん細胞株における薬剤の細胞傷害性も予測された。マウス黒色腫同種移植モデルでは、標的療法への感受性に影響を及ぼす特異的変異を有するマウス黒色腫細胞の、さまざまなキナーゼ標的薬単独または併用に対するDBP解析により、in vivoでの腫瘍縮小にもっとも効果的な組み合わせが予測された。DBPによって、慢性骨髄性白血病細胞は、キナーゼABLを阻害する薬剤に感受性を示す患者の細胞と、耐性を示す患者の細胞とに正確に分別され、ヒトがん検体における原理の証明がなされた。卵巣がんから作製された細胞懸濁液のDBP解析では、強いプライミングを示す細胞を有する患者のほうが、BH3ペプチド誘導性のプライミングに対する感受性が低い細胞を有する患者よりも、無増悪生存期間が長いことが示された。このようにDBPは、シグナル伝達の知識を、もっとも有効な併用療法を予測するためのアッセイの開発、有効群と無効群への患者の層別化、追加治療が必要となる可能性が高い患者の予測へと応用する力を示す。DBPは、的確な医薬や個別化がん治療に重要な進歩をもたらす。

N. R. Gough, From signaling knowledge to personalized therapy. Sci. Signal. 8, ec52 (2015).

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2015年3月10日号

Editor's Choice

がん
シグナル伝達の知識から個別化治療まで

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