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生化学
非酵素的なリジンリン酸化

Biochemistry
Nonenzymatic lysine phosphorylation

Editor's Choice

Sci. Signal., 21 April 2015
Vol. 8, Issue 373, p. ec98
DOI: 10.1126/scisignal.aab3709

Sudhakaran Prabakaran

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

C. Azevedo,T. Livermore, A. Saiardi, Protein polyphosphorylation of lysine residues by inorganic polyphosphate. Mol. Cell 58, 71–82 (2015). [PubMed]

タンパク質の翻訳後修飾(PTM)は、細胞の複雑性に寄与し、コード化されたゲノムの多様性を増大させる。すでに知られている数百のPTMのなかでもっとも研究されているのは、セリン残基、スレオニン残基、チロシン残基にリン酸基を付加する、キナーゼに仲介されたリン酸化である。それに比べて、リン酸をイノシトールピロリン酸(IP7)から予めリン酸化されたセリン残基へ非酵素的に転移させるピロリン酸化によるPTMはあまり研究されていないが、rRNA合成に関与するタンパク質Nsr1のピロリン酸化が報告されている。IP7は、ポリリン酸(polyP)の直鎖の産生も仲介している。Azevedoらは、酵母のrRNA合成に関与する2つのタンパク質、Nsr1(nuclear signal recognition)とTop1(topoisomerase、トポイソメラーゼ)のリジン残基にpolyPを同定した。ゲルシフトアッセイでは、野生型酵母由来のNsr1の移動度に比べて、IP7合成に必要な酵素であるイノシトール6キナーゼ(kcs1Δ)またはイノシトール6リン酸およびジホスホイノシトール5リン酸キナーゼ(vip1Δ)を欠失させた酵母由来のNsr1の移動度は低下した。液胞輸送体シャペロン(vtcΔ)を欠失してpolyPを産生できない酵母由来のNsr1の移動度シフト解析では、PTMがpolyP付加に関与することが示された。さらに、3つを超えるリン酸からなるpolyP鎖は加水分解するがIP7は加水分解しないエキソポリホスファターゼPpx1を野生型酵母由来の抽出物に添加してインキュベートすると、Nsr1の移動度が変化した。精製されたNsr1を野生型またはvip1Δ型の酵母由来の変性した細胞抽出物で処理すると、リン酸化されて移動度シフトを示したことから、リン酸基の非酵素的な共有結合性転移であることが示された。Top1に32P-polyPを添加してインキュベートすると、Top1に移動度シフトがみられたことから、Top1でも非酵素的polyPリン酸化が起こりうることを示している。予想外なことに、変異解析では、Nsr1とTop1のいずれもN末端領域のリジン残基でpolyPリン酸化が起きたことが示された。野生型およびvip1Δ型酵母では、Nsr1とTop1は核細胞質に散在したが、ksc1Δ型およびvtc4Δ型酵母(それぞれpolyPリン酸化は最小限またはまったくなし)では、Nsr1とTop1は核小体に限定されていた。変異酵母由来のタンパク質抽出物に含まれるTop1がin vitroでスーパーコイルDNAを弛緩させる能力の解析では、polyP修飾能がもっとも低い変異酵母(ksc1Δ、vtc4Δ)に由来するTop1の能力がもっとも高いことがわかり、polyPリン酸化による負の制御が示された。このように、アセチル化、メチル化、ユビキチン化、SUMO化などの他のPTMによる修飾も受けるリジン残基において、非酵素的なpolyP修飾はもうひとつのリン酸化形態となっている。この修飾はどの程度広く普及しているのか、その発生は何によって制御され、その可逆性は何によって調節されているのかは、さらなる研究の対象となる刺激的な問いである。

S. Prabakaran, Nonenzymatic lysine phosphorylation. Sci. Signal. 8, ec98 (2015).

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