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がん
PI3Kによる腫瘍不均一性の誘導

CANCER
Inducing tumor heterogeneity with PI3K

Editor's Choice

Sci. Signal. 08 Sep 2015:
Vol. 8, Issue 393, pp. ec253
DOI: 10.1126/scisignal.aad3711

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

S. Koren, L. Reavie, J. P. Couto, D. De Silva, M. B. Stadler, T. Roloff, A. Britschgi, T. Eichlisberger, H. Kohler, O. Aina, R. D. Cardiff, M. Bentires-Alj, PIK3CAH1047R induces multipotency and multi-lineage mammary tumours. Nature. 525, 114–118 (2015). [PubMed]

A. Van Keymeulen, M. Y. Lee, M. Ousset, S. Brohée, S. Rorive, R. R. Giraddi, A. Wuidart, G. Bouvencourt, C. Dubois, I. Salmon, C. Sotiriou, W. A. Phillips, C. Blanpain, Reactivation of multipotency by oncogenic PIK3CA induces breast tumour heterogeneity. Nature 525, 119–123 (2015). [PubMed]

乳がんは通常、不均一性である。すなわち、腫瘍には明らかに異なる系譜の多様な種類の細胞が含まれている。KorenらおよびBrohéeらは、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼの触媒サブユニットのがん関連突然変異体であるPIK3CAH1047Rの、系譜を限定した(基底または内腔の乳腺上皮)マウス細胞中の発現が、基底細胞の特性、内腔細胞の特性、およびその両方の特性をもつ細胞を含む乳房腫瘍を形成させたことを明らかにした。各研究グループは、マウス乳腺組織中の基底細胞または内腔細胞のいずれかにPIK3CAH1047Rを選択的に発現させ、得られた腫瘍の特性を細胞系譜追跡実験、マーカー解析および転写プロファイリングを用いて検討した。マウス乳腺基底上皮細胞にPIK3CA変異体を導入すると、内腔細胞に導入した場合に比べ腫瘍の発生が遅く、より低侵襲性の表現型となった。このことは、種々の生体外または細胞培養実験からも確認された。いずれかの系譜の細胞で最初にPIK3CAH1047Rを発現させた腫瘍中で、基底または内腔細胞種のマーカーを解析したところ、一部の細胞は内腔と基底の両細胞のマーカーをもち、一部の細胞は最初に発現させた細胞と類似したマーカーをもち、さらに一部の細胞はもう一方の細胞種と類似したマーカーをもつことが明らかになった。このことは、PIK3CAH1047Rは基底および内腔細胞に脱分化を誘導し、いずれの種類の細胞も産生される多能性の状態へと変化させることを示唆している。このように、乳がん中の細胞の種類に関するヒト腫瘍の分析は、その腫瘍の起源細胞を明らかにできない可能性がある。マイクロアレイ解析、腫瘍発生までの時間の解析、および腫瘍種の解析から、PIK3CAH1047Rが最初に内腔細胞に生じたときは、侵襲性の高いがんが生じることが示唆された。この一対の研究は、以下の3つの重要なメッセージを提供している。特異的なPI3K変異は乳房上皮細胞に多能性を誘導すること、変異が生じた腫瘍起源細胞(内腔または基底)は疾患の重症度を決定すること、さらに、基底または内腔マーカーに関する腫瘍細胞の解析からは、その細胞起源が明らかにできないかもしれないことである。

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2015年9月8日号

Editor's Choice

がん
PI3Kによる腫瘍不均一性の誘導

Research Article

E3リガーゼRNF43は核膜にTCF4を隔離することにより変異β-カテニンの下流のWntシグナル伝達を阻害する

酸化LDL結合CD36はマクロファージ内でNa+/K+-ATPase-Lyn複合体を動員してアテローム性動脈硬化症を促進する

Research Resources

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