真菌のクオラム

A quorum of fungi

Editor's Choice

Sci. Signal. 14 Jun 2016:
Vol. 9, Issue 432, pp. ec137
DOI: 10.1126/scisignal.aag3255

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

C. M. Homer, D. K. Summers, A. I. Goranov, S. C. Clarke, D. L. Wiesner, J. K. Diedrich, J. J. Moresco, D. Toffaletti, R. Upadhya, I. Caradonna, S. Petnic, V. Pessino, C. A. Cuomo, J. K. Lodge, J. Perfect, J. R. Yates III, K. Nielsen, C. S. Craik, H. D. Madhani, Intracellular action of a secreted peptide required for fungal virulence. Cell Host Microbe 19, 849–864 (2016). [PubMed]

R. C. May, Custom-made quorum sensing for a eukaryote. Dev. Cell 37, 391–392 (2016). [PubMed]

要約  細菌のクオラムセンシングシステムは、集団の密度に応じて、病原性などの集団行動を調節する。分泌されるクオラム因子は、低分子またはペプチドである可能性があり、環境中に蓄積された後にのみ集団行動を刺激し、細菌が自己の利益になる可能性の低い転写プログラムと代謝プログラムにエネルギーを浪費しないようにしている。Homerらは、11アミノ酸ペプチドQsp1(クオラムセンシング様ペプチド1)を介して病原性真菌クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)の病原性を調節するクオラムセンシングシステムを同定した。マウスへの鼻腔内感染後、Qsp1欠損変異型C. neoformansqsp1Δ細胞)では病原性が減弱し、野生型(WT)C. neoformansによるものとは異なる免疫応答が誘発された。培養では、qsp1Δ細胞は乾燥した皺のあるコロニーを形成したが、WT細胞は滑らかで艶やかなコロニーを形成した。qsp1Δ細胞を合成Qsp1で処理するかWT細胞の近くに配置すると、変異型コロニーは滑らかな表現型に転換した。既知の病原性因子の量または活性は、qsp1Δ細胞ではWT細胞と異なっており、トランスクリプトーム解析では、qsp1Δ細胞で差次的に発現される多くの遺伝子が細胞壁の生合成に関与していた。細胞密度が高いと、qsp1Δ細胞はWT細胞よりも細胞壁が薄くなり、細胞壁を損なうストレスに対する感受性がより強まった。Qsp1は分泌型24アミノ酸前駆体proQsp1のタンパク質切断によって細胞外で産生された。遺伝子スクリーニングでは、proQsp1を切断する分泌型プロテアーゼとしてのPqp1と、Qsp1の細胞への侵入経路となるオリゴペプチド輸送体としてのOpt1が同定された。細胞内で産生された遺伝子改変型Qsp1が、qsp1Δ細胞の乾燥コロニーと細胞壁の表現型をレスキューすることより、Qsp1が細胞内で機能することを確認した。Qsp1の受容体はまだ同定されていないが、Qsp1に対する転写応答の大部分には転写因子Liv3が必要であり、liv3Δ変異体は乾燥コロニーを形成した。これらの結果は、少なくとも1種の真菌がクオラムセンシングシステムを用いて病原性を調節していることを示している(Mayによる解説参照)

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2016年6月14日号

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