死してなお免疫を抑制

Immunosuppression even in death

Editor's Choice

Sci. Signal. 27 Sep 2016:
Vol. 9, Issue 447, pp. ec220
DOI: 10.1126/scisignal.aak9775

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

R. Eil, S. K. Vodnala, D. Clever, C. A. Klebanoff, M. Sukumar, J. H. Pan, D. C. Palmer, A. Gros, T. N. Yamamoto, S. J. Patel, G. C. Guittard, Z. Yu, V. Carbonaro, K. Okkenhaug, D. S. Schrump, W. M. Linehan, R. Roychoudhuri, N. P. Restifo, Ionic immune suppression within the tumour microenvironment limits T cell effector function. Nature 537, 539–543 (2016). [PubMed]

K. G. Chandy, R. S. Norton, Immunology: Channelling potassium to fight cancer. Nature 537, 497–499 (2016). [PubMed]

要約  腫瘍はその腫瘍微小環境に免疫抑制分子を放出することで、免疫系からの攻撃を阻むことに長けている。壊死と呼ばれる細胞死領域を有する腫瘍をもつ患者は、一般に予後不良である。Eilらは、メラノーマの壊死部位が、T細胞中のシグナル活性化を遮断するカリウムイオン(K+)を放出していることを見いだした。マウスまたはヒトのメラノーマではその健康な組織に比べて間質液中のK+濃度が高く、その濃度は細胞死が進んでいる領域で最大であった。高温または凍結解凍サイクルによる細胞死の誘導は、培養メラノーマ細胞からのK+放出を刺激した。培養CD8+T細胞へのK+添加は、T細胞受容体(TCR)の活性化を抑制し、TCRシグナル伝達により活性化されるセリン-トレオニンタンパク質キナーゼ(AKT)および機構的ラパマイシン標的(mTOR)のリン酸化を抑制し、さらにTCR-AKT–mTOR経路の遺伝子標的によりコードされるサイトカインであるインターフェロン-γ(IFN-γ)の産生を抑制した。外因性K+も、CD4+T細胞の極性化によるエフェクターT細胞生成を制限したが、制御性T細胞の生成は促進した。薬理学的スクリーニングおよび種々のフォローアップ細胞培養アッセイから、細胞内K+の増加はホスファターゼPP2Aを刺激することで、AKT-mTORを介したT細胞活性化を抑制することが明らかにされた。電位依存性カリウムポンプであるKv1.3(KCNA3によりコードされる)を過剰発現しているT細胞をマウスに注入すると、K+流出が促進され、AKT–mTOR活性化およびIFN-γ生成の腫瘍誘導性の抑制が阻害された。KCNA3を過剰発現しているT細胞が注射されたマウスでは、腫瘍増殖は減少し、生存期間が延長した。K+流入とPP2A活性化の間の機序は現在のところ不明であるが、この所見は、T細胞中の過剰なK+蓄積を遮断するよう設計された免疫療法が、メラノーマ患者や他の患者においても生存率を改善する可能性があることを示唆している(Chandy and Nortonのcommentary参照)。

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2016年9月27日号

Editor's Choice

死してなお免疫を抑制

Research Article

転写調節因子ID2のSTAT3を介する阻害を回避することにより樹状細胞の抗腫瘍活性が向上する

ヒトIL-22結合タンパク質アイソフォームはIL-22シグナル伝達のレオスタットとして機能する

NF-κBのサブユニットRelBはp100への結合をキナーゼNIKおよびIKK1と競合することによりp100のプロセシングを制御する

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