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リンパ腫におけるヤヌスキナーゼ1の非古典的な役割

A noncanonical role for Janus kinase 1 in lymphoma

Editor's Choice

Sci. Signal. 22 Nov 2016:
Vol. 9, Issue 455, pp. ec274
DOI: 10.1126/scisignal.aal4262

Alexandra A. Mushegian

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

L. Rui, A. C. Drennan, M. Ceribelli, F. Zhu, G. W. Wright, D. W. Huang, W. Xiao, Y. Li, K. M. Grindle, L. Lu, D. J. Hodson, A. L. Shaffer, H. Zhao, W. Xu, Y. Yang, L. M. Staudt, Epigenetic gene regulation by Janus kinase 1 in diffuse large B-cell lymphoma. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 113, E7260-E7267 (2016). [PubMed]

要約 ヤヌスキナーゼ(JAK)は、STATファミリーの転写因子を活性化させる古典的な役割に加えて、ヒストンをリン酸化し、クロマチン修飾を介して遺伝子発現に影響を及ぼす働きもする。いくつかのリンパ腫においては、STATシグナル伝達とJAK介在性のヒストン修飾の両方が調節不全に陥っている。Ruiらは、治癒率の低い進行性のリンパ腫である、活性化B細胞様サブタイプのびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(ABC DLBCL)が、JAK1を介するヒストン3のリン酸化に依存して悪性となることを見出し、JAK1阻害剤を既存のリンパ腫治療薬と併用すると、リンパ腫細胞がより効果的に殺傷されることを示した。ABC DLBCL細胞は、STAT3産生を促進する、サイトカインのインターロイキン-6(IL-6)およびIL-10による自己分泌シグナル伝達を、生存のために必要とする。悪性の表現型の創出にJAKが果たす役割を解明するために、著者らは、ABC DLBCL細胞と、進行性がより低いサブタイプである胚中心B細胞様DLBCL(GCB DLBCL)細胞とのあいだで、シグナル伝達経路を比較した。化合物AZD1480によってJAK1を薬理学的に阻害すると、ABC DLBCL細胞の生存率が低下したが、GCB DLBCL細胞の生存率は低下しなかった。しかし、JAK1欠損ABC細胞において恒常的活性化型のSTAT3を過剰発現させても、細胞生存は部分的にしか回復しなかった一方、JAK1を異所性発現させると生存が回復したことから、JAK1の役割は、STAT3のリン酸化のみによるものではないことが示された。JAK1は、ABC DLBCL細胞株HBL1およびTMD8の核画分で検出された。また、他の型のリンパ腫におけるJAK2の非古典的な作用と同様に、JAK1をノックダウンすると、細胞周期調節転写因子MYCの存在量が減少した。JAK1の阻害により、ヒストン3のチロシン41(H3Y41)の全体的なリン酸化が減少した。クロマチン免疫沈降シークエンシング(ChIP-Seq)解析により、リン酸化H3Y41部位のほとんどが、タンパク質をコードする遺伝子のプロモーターと関連していることが明らかになった。AZD1480によってリン酸化が減少したH3Y41部位のうち、STAT結合領域にあったのは10%未満であった。遺伝子発現解析により、AZD1480に応答して発現が低下した遺伝子は、JAK1依存性のH3Y41リン酸化を受ける遺伝子と大幅に重複することが示され、JAK1依存性のクロマチン修飾によりこれらの遺伝子の発現が誘導されることが示唆された。そのような遺伝子の中には、ABC DLBCLの病態に関与する、mycmyd88irf4などの遺伝子があった。核内因子κB経路へのMYD88シグナル伝達により、IL-6とIL-10が産生され、これらのサイトカインはJAK1を活性化させる。したがって、JAK1依存性のmyd88発現増加は、活性化の正のフィードバックループの一部である可能性がある。 IRF4は、BCR活性化チロシンキナーゼBTKの下流でB細胞受容体(BCR)シグナル伝達によって活性化される転写因子である。2つのABC DLBCL細胞株において、AZD1480をBTK阻害剤であるイブルチニブと併用すると、いずれかの化合物を単独で用いた場合よりも多くの細胞死が引き起こされた。したがって、JAKを介するエピジェネティック調節は、悪性リンパ腫治療のさらなる標的となる可能性がある。JAK介在性のクロマチン修飾が正常細胞とがん細胞とでどのように異なるのかを明らかにするために、さらなる研究が必要と考えられる。

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