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受精中の自然免疫応答を停止する

Shutting down innate immune responses during fertilization

Editors' Choice

Sci. Signal. 02 May 2017:
Vol. 10, Issue 477, eaan5400
DOI: 10.1126/scisignal.aan5400

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

T. Abe, A. Lee, R. Sitharam, J. Kesner, R. Rabadan, S. D. Shapira, Germ-cell-specific inflammasome component NLRP14 negatively regulates cytosolic nucleic acid sensing to promote fertilization. Immunity46, 621-634 (2017).
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G. N. Barber, The birds, the bees, and innate immunity. Immunity 46, 521-522 (2017).
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インフラマソームの構成要素であるNLRP14は受精中に核酸認識経路を阻害する。

要約
細胞質内で核酸が認識されると、自然免疫応答の一環としてI型インターフェロン(IFN)の産生が促進される。センサーRIG-Iは、細胞質内でウイルスのRNAは検知するが宿主のRNAは検知せず、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)は、自己、非自己の細胞質内DNAいずれかに応答してIFN産生を促進させる(Barber参照)。受精中には精細胞由来のDNAが卵母細胞の細胞質に曝露されることになることから、Abeらは、核酸認識を阻害することによって受精中の免疫応答を遮断する生殖細胞特異的な因子のスクリーニングを試みた。受精後に発現量が低下する20候補遺伝子が同定された。cGASとそのエフェクターであるSTINGを発現するレポーター細胞株でこれらの遺伝子を過剰発現させることにより、核酸認識の阻害因子候補としてインフラマソームの構成要素NLRP14が同定された。細胞のNLRP14をノックダウンさせると、(RIG-IまたはcGASによる)核酸シグナル伝達が亢進され、抗ウイルス免疫が促進された。共免疫沈降法では、NLRP14がRIG-I経路とcGAS経路の両方の構成要素と相互作用すること、また、両経路に共通し、I型IFN産生に必要な転写因子を活性化するキナーゼTBK1の活性化を、NLRP14が阻害することが示された。NLRP14とTBK1の結合にはNLRP14のN末端領域が必要であり、両者が結合すると、TBK1はポリユビキチン化され、分解された。精子形成不全で不妊の男性では、一塩基多型によって切断型変異タンパク質K108X-NLRP14が産生される。遺伝子導入細胞では、K108X-NLRP14はTBK1と会合できず、野生型NLRP14に比べてTBK1の活性を阻害する効果が低く、結果的にIFN産生を増加させた。まとめると、これらのデータは、NLRP14が、核酸認識を阻害することによって、受精中にIFN応答が引き起こされるのを防いでいることを示唆している。

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2017年5月2日号

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