疼痛に対するPD-L1の作用

PD-L1 on pain

Editor's Choice

Sci. Signal. 18 Jul 2017:
Vol. 10, Issue 488, eaao3722
DOI: 10.1126/scisignal.aao3722

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

G. Chen, Y. H. Kim, H. Li, H. Luo, D.-L. Liu, Z.-J. Zhang, M. Lay, W. Chang, Y.-Q. Zhang, R.-R. Ji, PD-L1 inhibits acute and chronic pain by suppressing nociceptive neuron activity via PD-1. Nat. Neurosci. 20, 917-926 (2017). Google Scholar

M. Hirth, J. Gandla, R. Kuner, A checkpoint to pain. Nat. Neurosci. 20, 897-899 (2017). Google Scholar

腫瘍関連細胞表面分子であるPD-L1は免疫抑制チェックポイントであるのみならず、感覚ニューロンにおける疼痛シグナル伝達を抑制する

要約
慢性疼痛は進行がん患者に共通する症状であり、これは一部には腫瘍細胞からの侵害受容促進性因子の分泌による。しかし、初期の腫瘍は通常は疼痛を引き起こさず、最近では初期の膵腫瘍からのケモカインの分泌は疼痛シグナル伝達を抑制することが観察され、このことは腫瘍が密かに増殖することを容易にしている。さらに腫瘍は、腫瘍細胞上のプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)とその受容体である免疫細胞上のPD-1との接触を通じて、免疫細胞を介した検知も抑制している。PD-L1-PD-1軸を阻害する免疫療法は、一部のがん患者には有効である。今回の研究でChenらは、PD-L1が疼痛シグナル伝達も抑制することを明らかにしている(Hirthらの論文も参照)。著者らは、PD-1が、特に脊髄および後根神経節(DRG)の感覚ニューロンなど種々の組織で発現されていることを観察した。マウスにおけるPD-L1の投与は、自発痛および化学的/機械的に誘発される疼痛を抑制した。マウスおよび培養DRGニューロンを用いた種々のアッセイから、PD-L1の鎮痛作用は、これとPD-1との相互作用およびその後のSHP-1ホスファターゼの活性化を介して生じ、それがNa2+チャネルの活性を抑制しK+チャネルの活性を増強することで、最終的にニューロンを過分極させ、その興奮性を抑えることが明らかとなった。担がんマウスにおけるPD-1の阻害は、アロディニアおよび自発痛を誘発した。このことは、腫瘍が免疫および疼痛を介した早期発見を阻害する1手段としてPD-L1を利用している可能性を示している。さらに疼痛はがん患者において、PD-1を標的とする免疫療法の不運な副作用かもしれない。この知見は、疼痛シグナル伝達の未知の調節因子を明らかにしている。著者らは、PD-L1-PD-1軸の活性化は患者における慢性疼痛の治療に有効かもしれないことを示唆しているが、それに伴う感染と発がんのリスク(さらにその他の組織におけるPD-1の存在を考えると、潜在的に未知の転帰のリスクも)、患者において慎重に考慮して監視する必要があるだろう。

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2017年7月18日号

Editor's Choice

疼痛に対するPD-L1の作用

Research Article

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