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病原体に誘導されるミトコンドリアの断片化

Pathogen-induced mitochondrial fragmentation

Editor's Choice

Sci. Signal. 03 Oct 2017:
Vol. 10, Issue 499, eaaq0807
DOI: 10.1126/scisignal.aaq0807

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

P. Escoll, O.-R. Song, F. Viana, B. Steiner, T. Lagache, J.-C. Olivo-Marin, F. Impens, P. Brodin, H. Hilbi, C.Buchrieser, Legionella pneumophila modulates mitochondrial dynamics to trigger metabolic repurposing of infected macrophages. Cell Host Microbe 22, 302-316.e7 (2017).
Google Scholar

V. Kozjak-Pavlovic, S. R. Chowdhury, T. Rudel, Fragment and conquer. Cell Host Microbe 22, 255-257 (2017).
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レジオネラ菌(Legionella pneumophila)はミトコンドリアの分裂機構の活性化を促進し、宿主マクロファージを代謝的に再プログラムする。

要約
細胞内病原菌は、宿主の代謝経路を標的とし、複製に最適な状況を確保することが多い。細胞内病原体レジオネラ菌(Legionella pneumophila)は、宿主マクロファージによる内部移行後、レジオネラ菌含有液胞(LCV)に隔離され、そこから宿主細胞質へ4型分泌装置(T4SS)を用いてエフェクタータンパク質を注入する。Escollらは、感染した初代ヒト単球由来マクロファージ(hMDM)のライブイメージングを実施し、レジオネラ菌のT4SSの機能を欠失させた場合でも、LCVがミトコンドリアと動的に相互作用することを観察した。また、感染時には、レジオネラ菌GTPアーゼRan活性化T4SSエフェクタータンパク質に依存する形でミトコンドリアの断片化も促進された。著者らは、このT4SSエフェクタータンパク質をMitFと名付けた。細胞からRan、Ran結合タンパク質2(RanBP2)、またはダイナミン1様タンパク質(DNM1L、別名Drp1)の枯渇は、LCVに誘導されるミトコンドリアの断片化とレジオネラ菌の複製を抑制した。DNM1Lは、ミトコンドリア膜に動員されて分裂を促進するGTPアーゼであり、実際に、レジオネラ菌感染によってDNM1Lのミトコンドリアへの蓄積がT4SSに依存した形で促進された。RanとRanBP2はアクチン動態の調節に関与し、RanBP2はDNM1L活性の調節にも関連づけられていることから、これらの機能のいずれか、または両方への刺激が、ミトコンドリアの分裂に寄与している可能性がある(Kozjak-Pavlovicら参照)。ミトコンドリアの分裂は細胞死の指標とみなされることが多いが、レジオネラ菌に感染しても、細胞死の他の形態学的マーカーや生化学的マーカーは誘導されなかった。ところが、感染によってミトコンドリアの機能は変化し、解糖系が亢進され、酸化的リン酸化が抑制された。これは、がん細胞におけるワールブルク効果(解糖系の亢進と酸化的リン酸化の抑制がみられる)に似た代謝シフトを細胞が起こしたということだ。解糖系を薬理学的に阻害すると、レジオネラ菌の複製が妨害された。これは、レジオネラ菌は非形質転換細胞よりもがん細胞でより効率的に複製されるという以前の観察の説明となりうる。DNM1Lが関与していることと、アポトーシスマーカーが誘導されないことが、レジオネラ菌感染と、ミトコンドリア構造にも影響する他の細胞内病原体との違いである(Kozjak-Pavlovicら参照)。

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2017年10月3日号

Editor's Choice

病原体に誘導されるミトコンドリアの断片化

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