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新たなつながり:妊娠特異的なシグナル伝達

New connections: Pregnancy-specific signaling

Editor's Choice

Sci. Signal. 10 Oct 2017:
Vol. 10, Issue 500, eaaq1408
DOI: 10.1126/scisignal.aaq1408

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

M. R. Hutson, A. L. Keyte, M. Hernández-Morales, E. Gibbs, Z. A. Kupchinsky, I. Argyridis, K. N. Erwin, K. Pegram, M.Kneifel, P. B. Rosenberg, P. Matak, L. Xie, J. Grandl, E. E. Davis, N. Katsanis, C. Liu, E. J. Benner, Temperature-activated ion channels in neural crest cells confer maternal fever-associated birth defects. Sci. Signal. 10, eaal4055 (2017).  Abstract/FREE Full Text  Google Scholar

Y. Li, J. Zhang, D. Zhang, X. Hong, Y. Tao, S. Wang, Y. Xu, H. Piao, W. Yin, M. Yu, Y. Zhang, Q. Fu, D. Li, X. Chang, M.Du, Tim-3 signaling in peripheral NK cells promotes maternal-fetal immune tolerance and alleviates pregnancy loss. Sci. Signal. 10, eaah4323 (2017).  Abstract/FREE Full Text  Google Scholar

M. Nezu, T. Souma, L. Yu, H. Sekine, N. Takahashi, A. Z.-S. Wei, S. Ito, A. Fukamizu, Z. K. Zsengeller, T. Nakamura,A. Hozawa, S. A. Karumanchi, N. Suzuki, M. Yamamoto, Nrf2 inactivation enhances placental angiogenesis in a preeclampsia mouse model and improves maternal and fetal outcomes. Sci. Signal. 10, eaam5711 (2017).  Abstract/FREE Full Text  Google Scholar

3報の論文において、妊娠中の母親と胎児のあいだに生じるクロストークが明らかにされている。

要約

多くの母体組織のシグナル伝達経路は、成長する胎児に対応するために妊娠中に再配線され、逆に、母親が生成するシグナルが、胎児の成長と発達に影響を及ぼす。3報の論文において、妊娠中の母親と胎児のあいだに生じるクロストークが明らかにされている。

妊娠初期の母親の発熱は、特定の変異に起因しない、よくみられる心臓および頭蓋顔面先天異常に関連する環境要因である。Hutsonらは、ニワトリまたはゼブラフィッシュ胚を用いて、高体温が神経堤細胞の温度感受性TRPV1およびTRPV4イオンチャネルを活性化し、先天異常を起こした組織を発生させることを見出した。ニワトリ胚の神経堤細胞においてこれらのチャネルのいずれかを一過性に活性化すると、発熱により誘発されるものと類似した心臓および頭蓋顔面先天異常が生じた。これらの結果から、妊娠第1期の発熱エピソード時にTRPV1またはTRPV4を阻害することで、先天異常でよくみられる病態の発生率が低下する可能性があることが示唆される。

母親の免疫系は、妊娠第1期に胎児に対する寛容を発達させなければならず、反復流産はこのシステムの破綻に起因する可能性がある。Li らは、妊娠第1期には血中ナチュラルキラー(NK)細胞で受容体Tim-3の細胞表面での量が増加していることを見出した。正常妊娠の女性のNK細胞とは対照的に、反復流産の患者のNK細胞においてはTim-3量が減少しており、免疫抑制が障害されていた。流産易発性マウスに、Tim-3陽性末梢NK細胞を与えると、胎仔の喪失から保護されたが、Tim-3を欠損する末梢NK細胞を与えた場合にはそのような保護は認められなかったことから、Tim-3陽性末梢NK細胞が母体胎児間の免疫寛容を促進し、反復流産のバイオマーカーとなる可能性のあることが示唆された。

妊娠高血圧腎症は、妊娠20週前後に高血圧とタンパク尿が急性に発症する疾患であり、胎児の成長を妨げ、母親に臓器障害をもたらすこともある。利用可能な治療選択肢は少ない。活性酸素種(ROS)によってもたらされる酸化ストレスが、胎盤の血管形成(血管新生)を抑制することにより、妊娠高血圧腎症のリスクを高めることが提唱されている。しかし、Nezuらは、妊娠高血圧腎症マウスモデルを用いて、ROS濃度を低下させると、胎盤の血管新生、胎仔の成長、母親の生存が低下することを見出した。一方、ROS濃度を上昇させると、胎盤の血管新生が増加し、胎仔および母親の転帰が改善した。これらの結果は、臨床試験において抗酸化剤が妊娠高血圧腎症の予防に無効である理由を説明するのに役立つ。

総合するとこれらの論文では、妊娠中に活性化されるシグナル伝達経路を理解することにより、先天異常や反復流産、妊娠高血圧腎症を予防するための新たな治療がもたらされる可能性があることが示されている。

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2017年10月10日号

Editor's Choice

新たなつながり:妊娠特異的なシグナル伝達

Research Article

神経堤細胞の温度活性化イオンチャネルは母体発熱に関連する出生異常をもたらす

パルス性SHIP1阻害によるT細胞機能とNK細胞機能の二元的促進が抗腫瘍免疫と生存を改善する

IL-7によりプログラムされるTH9細胞の分化および抗腫瘍活性の調節にFoxo1およびFoxp1は相反する役割を果たす

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