低温から脱する

Coming out of the cold

Editor's Choice

Sci. Signal. 17 Sep 2019:
Vol. 12, Issue 599, eaaz4967
DOI: 10.1126/scisignal.aaz4967

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

J. Gong, J. Liu, E. A. Ronan, F. He, W. Cai, M. Fatima, W. Zhang, H. Lee, Z. Li, G.-H. Kim, K. P. Pipe, B. Duan, J. Liu, X. Z. S. Xu, A cold-sensing receptor encoded by a glutamate receptor gene. Cell 178, 1375-1386.e11 (2019).
Google Scholar

グルタミン酸受容体がチャネル非依存性Gタンパク質依存性機構を介して低温センサーとして機能する。

要約

低温を検知して反応する能力は、進化的に保存された生存に必要な能力である。Gongらは、冷却に反応してCa2+応答をみせる線虫(Caenorhabditis elegans)の腸上皮細胞を用いたスクリーニングによって、線虫の低温センサーとしてカイニン酸型グルタミン酸受容体GLR-3を同定した。このような応答は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞でGLR-3を、あるいはゼブラフィッシュまたはヒトのホモログを異所性に発現させることによって誘導された。GLR-3は、腸上皮細胞だけでなく感覚神経細胞ASERにも存在した。glr-3欠損型線虫では冷却に対するCa2+応答はみられなかったが、この欠損はGLR-3またはマウスのホモログであるGluK2を発現させると回復した。また、glr-3変異型線虫は低温に対する回避行動を呈さなかったが、この欠損はglr-3またはGluK2をASER神経細胞で特異的に発現させると回復した。GluK2とは異なり、GLR-3は細胞で発現させてもチャネル活性を示さなかった。しかし、glr-3変異体の低温感受性欠損は、チャネル機能不全型GluK2変異体または類似した変異を有するGLR-3をASER神経細胞で発現させると回復した。さらに、グルタミン酸シグナル伝達を欠損した線虫変異株は低温感受性を保持していた。これらの結果は、GLR-3による低温センシングがグルタミン酸結合にもチャネル活性にも依存していないことを示している。薬理学的解析と遺伝学的解析では、低温に誘導されるCa2+応答にはGi/oタンパク質と共役するGLR-3が必要であることが示された。このように、進化的に保存されたグルタミン酸受容体がチャネル非依存性Gタンパク質依存性機構を介して低温センサーとして機能する。

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2019年9月17日号

Editor's Choice

低温から脱する

Research Article

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Reviews

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