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ストレス、年齢、そしてがん

Stress, age, and cancer

Editor's Choice

Sci. Signal. 01 Oct 2019:
Vol. 12, Issue 601, eaaz4717
DOI: 10.1126/scisignal.aaz4717

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

H. Yang, L. Xia, J. Chen, S. Zhang, V. Martin, Q. Li, S. Lin, J. Chen, J. Calmette, M. Lu, L. Fu, J. Yang, Z. Pan, K. Yu, J. He, E. Morand, G. Schlecht-Louf, R. Krzysiek, L. Zitvogel, B. Kang, Z. Zhang, A. Leader, P. Zhou, L. Lanfumey, M. Shi, G. Kroemer, Y. Ma, Stress-glucocorticoid-TSC22D3 axis compromises therapy-induced antitumor immunity. Nat. Med. 25, 1428-1441 (2019). Google Scholar

J. Sceneay, G. J. Goreczny, K. Wilson, S. Morrow, M. J. DeCristo, J. M. Ubellacker, Y. Qin, T. Laszewski, D. G. Stover, V. Barrera, J. N. Hutchinson, R. A. Freedman, E. A. Mittendorf, S. S. McAllister, Interferon signaling is diminished with age and is associated with immune checkpoint blockade efficacy in triple-negative breast cancer. Cancer Discov. 9, 1208-1227 (2019). Abstract/FREE Full Text Google Scholar

ストレスと高齢は、インターフェロンを介した抗腫瘍性の免疫監視および治療を抑制する

要約

ストレスは、健康とウェルネスに対して顕著で有害な作用をもつ。さらにこれは発がんと、治療を受けるがん患者の予後不良とも関係している。Yangらはマウスを用い、ストレスホルモンであるグルココルチコイドの産生が、腫瘍に対する免疫療法の効果を抑制することを見出した。例えば社会的敗北ストレスのプログラムを受けたマウスでは、グルココルチコイドであるコルチコステロンの血清中濃度の増加が認められ、これは、いじめや慢性的な社会的従属後にヒトで認められているものと同様の挙動を誘発した。コルチコステロンは樹状細胞(DC)において、グルココルチコイド受容体をコードする遺伝子であるTsc22d3の発現を亢進した。その後このDCは、化学的に誘導したまたは植込まれた腫瘍に浸潤したときにI型インターフェロン(IFN)を産生できず、それにより、細胞傷害性T細胞におけるIFN-γ依存性抗腫瘍効果を誘導することができず、結果として化学療法および免疫療法の効果が低下した。これらの影響は、グルココルチコイドの投与により模倣され、グルココルチコイド受容体アンタゴニストの投与またはTsc22d3のDC特異的欠失によって阻止された。これらの所見は、ストレスががん患者の臨床転帰に及ぼしている疫学的現象の根底にある細胞間分子機構を示し、治療的介入が有益である可能性を明らかにした。

IFNシグナル伝達は、その腫瘍細胞自体への抗増殖効果と、特に抗原提示の促進を介した免疫細胞活性の誘導(チェックポイント阻害剤の成功に必要なもう一面であるもの)の両方について、抗腫瘍効果との関係が広く示されている。トリプルネガティブ乳がん(TNBC)細胞は他のサブタイプと比較して一般に、その表面の免疫細胞チェックポイント受容体であるプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の存在量が高いことから、チェックポイント阻害免疫療法に魅力的な腫瘍となっている。ただし、大半の試験は60歳未満の患者を対象に実施されているものの、がんの発生率は60歳を超えた年齢の方が高い。Sceneayらは異種移植マウスとTNBCを有するヒトの両方で、腫瘍微小環境におけるIFNシグナル伝達とそれに関連した抗原提示は年齢とともに低下することを見出した。IFNシグナル伝達の低下は、浸潤性リンパ球の活性の低下、およびチェックポイント阻害薬である抗PD-L1および抗CTLA4抗体による増殖阻害の減少と関連していた。マウスにおいてIFN経路活性化因子STINGのアンタゴニストを追加投与したとき、チェックポイント阻害剤の効果が改善した。このような年齢と関連した効果は、メラノーマのマウスモデルにおいても報告されている。免疫系が加齢に伴い変化することは知られているが、本研究から、免疫療法の効果を制限するこれらの変化の1つとして、IFNシグナル伝達の低下が特定された。IFNを介する免疫に対するストレスの影響に関する上記の所見と組み合わせ、これらの報告は、腫瘍固有の要因や微小環境の要因に加え、年齢やストレスなど患者固有の要因も、患者に対するよりホリスティックな臨床戦略に取り入れるべきことを示している。

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2019年10月1日号

Editor's Choice

ストレス、年齢、そしてがん

Research Article

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