- ホーム
- 組織および生物種をまたいだ保護
組織および生物種をまたいだ保護
Protection between tissues and across species
Sci. Signal. 26 May 2020:
Vol. 13, Issue 633, eabb7040
DOI: 10.1126/scisignal.abb7040
Wei Wong
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
B. J. Saeedi, K. H. Liu, J. A. Owens, S. Hunter-Chang, M. C. Camacho, R. U. Eboka, B. Chandrasekharan, N. F.Baker, T. M. Darby, B. S. Robinson, R. M. Jones, D. P. Jones, A. S. Neish, Gut-resident Lactobacilli activate hepatic Nrf2 and protect against oxidative liver injury. Cell Metab. 31, 956-968.e5 (2020).
Google Scholar
腸内の乳酸桿菌(Lactobacilli)が肝臓のNrf2依存性アンチオキシダント応答を刺激する。
要約
血液が腸から肝門脈を通って肝臓へ流れるおかげで、肝臓は腸内マイクロバイオームで産生されたシグナルを確実に受け取ることができる。Saeediらは、無菌環境で育てられたマウスを通常の飼育環境に移すと、アンチオキシダント応答を調節する転写因子Nrf2の遺伝子標的の肝臓発現量が増加することを見出した。多様な種類の乳酸桿菌(Lactobacilli)を餌として与えられたショウジョウバエ(Drosophila)では、肝臓に類似した器官である脂肪体でNrf2活性が認められた。ヒト共生菌であるLGG乳酸菌(Lactobacillus rhamnosus GG)を餌として与えると、いずれも酸化ストレスを誘発するアセトアミノフェンまたはパラコートを投与されたショウジョウバエの生存率が改善された。同様に、マウスに経口管栄養法でLGG乳酸菌を与えると、肝臓のNrf2活性が亢進され、Nrf2に依存する形でアセトアミノフェンとエタノールの肝毒性から保護された。LGG乳酸菌を与えられたマウスの門脈血中には低分子5-メトキシインドール酢酸(5-MIAA)が存在した。HepG2細胞を5-MIAAで処理すると、Nrf2の標的遺伝子の発現量が増加し、Nrf2の核移行と活性化が促進された。このように、腸内の乳酸桿菌が肝臓のNrf2を刺激することによって肝臓を酸化ストレスから保護している。