ジカとユビキチン

Zika and ubiquitin

Editor's Choice

Sci. Signal. 22 Sep 2020:
Vol. 13, Issue 650, eabe8636
DOI: 10.1126/scisignal.abe8636

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

M. I. Giraldo, H. Xia, L. Aguilera-Aguirre, A. Hage, S. van Tol, C. Shan, X. Xie, G. L. Sturdevant, S. J. Robertson, K. L. McNally, K. Meade-White, S. R. Azar, S. L. Rossi, W. Maury, M. Woodson, H. Ramage, J. R. Johnson, N. J.Krogan, M. C. Morais, S. M. Best, P.-Y. Shi, R. Rajsbaum, Envelope protein ubiquitination drives entry and pathogenesis of Zika virus. Nature 585, 414-419 (2020).
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ジカウイルスエンベロープタンパク質のユビキチン化がウイルス侵入と発病を誘導する

要約

ジカウイルス(ZIKV)は他のフラビウイルスと異なり、神経学的障害を引き起こし、生殖組織において複製する。このような特性の根底にある機構を検討するため、GiraldoらはZIKVまたはその他のフラビウイルスを感染させた細胞の質量分析に基づく解析を行い、翻訳後修飾を受けるウイルスタンパク質を同定した。ウイルス侵入に不可欠なZIKVのエンベロープ(E)タンパク質は、フラビウイルスで保存されている残基K38および保存されていない残基K281においてLys63(K63)結合型ポリユビキチン化を受けていた。E(K38R)およびE(K281R)というEタンパク質ユビキチン化部位で変異させた遺伝子組換え型ZIKVは、種々のヒト細胞株において複製が減弱していた。E(K281R) ZIKVを感染させたマウスは野生型ZIKVを感染させたマウスと比較し、特に脳および生殖組織のウイルス量が減少していたが、他の組織におけるウイルス量は比較的類似していた。脳および胎盤細胞株におけるE3ユビキチンリガーゼTRIM7の欠損は、野生型ZIKVの複製の低下に至ったが、E(K38R) ZIKVの複製は低下しなかった。ZIKV感染細胞においてTRIM7はゴルジに集合し、そこでEタンパク質と共局在していた。細胞から放出されたZIKV粒子ではK63ポリユビキチン化Eタンパクが検出可能であり、これはTRIM7欠損細胞から放出された粒子で比較的少なかった。ZIKVに感染させたTRIM7欠損マウスでは同じく感染させた野生型マウスに比較し、脳および生殖組織におけるウイルス量が少なかった。最後に、K63結合ユビキチンに対するモノクローナル抗体はin vitroおよびin vivoにおいてZIKVの複製を阻害したが、K48結合ユビキチンに対するモノクローナル抗体はこれを阻害しなかった。まとめるとこれらのデータは、ZIKVのEタンパク質のK63結合型ポリユビキチン化は、E3リガーゼTRIM7に依存して組織特異的にウイルス侵入を促進することを示唆している。

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