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クレアチンのがんとの関係

A cancerous connection for creatine

Editor's Choice

Sci. Signal. 30 Mar 2021:
Vol. 14, Issue 676, eabi7099
DOI: 10.1126/scisignal.abi7099

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: wwong@aaas.org

O. A. Maguire, S. E. Ackerman, S. K. Szwed, A. V. Maganti, F. Marchildon, X. Huang, D. J. Kramer, A. Rosas-Villegas, R. G. Gelfer, L. E. Turner, V. Ceballos, A. Hejazi, B. Samborska, J. F. Rahbani, C. B. Dykstra, M. G. Annis, J.-D. Luo, T. S. Carroll, C. S. Jiang, A. J. Dannenberg, P. M. Siegel, S. A. Tersey, R. G. Mirmira, L. Kazak, P. Cohen, Creatine-mediated crosstalk between adipocytes and cancer cells regulates obesity-driven breast cancer. Cell Metab. 33, 499-512.e6 (2021).
Google Scholar

M. L. Reitman, How does obesity promote breast cancer tumor growth? Cell Metab. 33, 462-463 (2021).
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肥満は、脂肪細胞が近隣の乳がん細胞によって増殖促進のために利用されるクレアチンを放出するように誘導する。

要約

乳がん患者の肥満は、疾患の再発、高侵襲性、死亡のリスクが高いことと相関する。Maguireらは、肥満状態では脂肪細胞が近隣の乳がん細胞にクレアチンを供給することを明らかにした。クレアチンは、リン酸化されると高エネルギーリン酸の貯蔵庫となる(Reitmanも参照)。E0771細胞を用いた同所性のトリプルネガティブ乳がんモデルでは、高脂肪食で飼育されているマウスは、通常の固形飼料または低脂肪食で飼育されているマウスに比べて、より低酸素性でサイズが大きい腫瘍を持っていた。肥満マウスの対側乳房脂肪体由来の脂肪組織と比べると、腫瘍周囲の脂肪組織では、クレアチン生合成の律速酵素であるグリシンアミジノトランスフェラーゼ(Gatm)をコードする遺伝子の発現が亢進されていた。さらに、肥満マウスの腫瘍では、クレアチン濃度が高まっていた。食餌で外因的に供給されたクレアチンは腫瘍の増悪に影響しなかったことから、乳がん細胞は腫瘍微小環境からクレアチンを獲得することが示唆された。高脂肪食で肥満させ、乳腺腫瘍を同所移植した場合、脂肪細胞特異的Gatm欠損マウスは対照マウスよりも長く生存した。E0771細胞でRNAiによってクレアチン輸送体SLC6A8をノックダウンさせると、in vitroのクレアチン取り込みとin vivoの腫瘍増殖が抑制された。肥満マウスのE0771細胞では、Slc6a8だけでなく、長鎖脂肪酸から長鎖脂肪酸アシルCoAへの変換を触媒する酵素をコードするAcsbg1の発現も亢進されていた。E0771細胞でACSBG1を過剰発現させると、肥満マウスの腫瘍増悪がSLC6A8依存的に亢進され、これらの細胞ではATPおよびクレアチンリン酸の量が増加していた。対照的に、RNAiによるAcsbg1のノックダウンとアシルCoA合成酵素活性の薬理学的阻害薬を組み合わせると、肥満マウスの腫瘍量の増加が予防された。ヒト乳がん検体でのSLC6A8ACSBG1の発現は、肥満状態とは独立して、予後不良と相関した。このように、肥満は脂肪細胞から腫瘍微小環境へのクレアチンの分泌を誘導し、それによって近隣の乳がん細胞の増殖を促進する。

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クレアチンのがんとの関係

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