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GRK5のN末端ペプチドが圧過負荷肥大心および心不全を軽減する
A peptide of the N terminus of GRK5 attenuates pressure-overload hypertrophy and heart failure
Sci. Signal. 30 Mar 2021:
Vol. 14, Issue 676, eabb5968
DOI: 10.1126/scisignal.abb5968
Ryan C. Coleman, Akito Eguchi, Melissa Lieu, Rajika Roy, Eric W. Barr, Jessica Ibetti, Anna-Maria Lucchese, Amanda M. Peluzzo, Kenneth Gresham, J. Kurt Chuprun, and Walter J. Koch*
Center for Translational Medicine, Lewis Katz School of Medicine at Temple University, Philadelphia, PA 19140, USA.
* Corresponding author. Email: walter.koch@temple.edu
要約
圧過負荷心不全の発症機序および進行の根底には遺伝子発現の異常な変化があり、これが非適応性心肥大、心室リモデリングおよび収縮不全をもたらしている。Gタンパク質Gqを介したシグナル伝達が、一部はGタンパク質共役受容体キナーゼ5(GRK5)の活性化を通じて適応不全および心不全を引き起こす。また、肥大刺激が心筋細胞核内へのGRK5の蓄積を引き起こし、ここでNFATなど複数の転写因子を介した病的な遺伝子発現を制御している。核を標的とするGRK5の移行は、カルモジュリン(CaM)と結合するアミノ末端(NT)ドメインを介して生じている。本稿でわれわれは、CaM結合ドメインを含むGRK5 NTをコードするペプチド(GRK5nt)を心筋細胞に発現させることにより、圧過負荷性の適応不全および心不全におけるGRK5を介した病態の予防に取り組んだ。培養心筋細胞におけるGRK5ntの発現により、病的遺伝子の発現およびNFATとNF-κBの転写活性の減弱を含め、Gq共役受容体を介した肥大が抑制された。GRK5ntはCa2+-CaMと結合し、Ca2+-CaMと内因性GRK5との会合を阻害し、それによって圧過負荷後のGRK5の核蓄積を抑制した。心臓特異的にGRKntを発現するマウス(TgGRK5ntマウス)を作製したところ、慢性的な横行大動脈縮窄術後の心肥大、心室機能障害、肺うっ血および心筋線維症の発現が抑制されていた。まとめるとわれわれのデータは、GRK5ntが、心不全を抑制する病的GRK5シグナル伝達の阻害因子として働くことを支持している。
Citation: R. C. Coleman, A. Eguchi, M. Lieu, R. Roy, E. W. Barr, J. Ibetti, A.-M. Lucchese, A. M. Peluzzo, K. Gresham, J. K. Chuprun, W. J. Koch, A peptide of the N terminus of GRK5 attenuates pressureoverload hypertrophy and heart failure. Sci. Signal. 14, eabb5968 (2021).