変異型P53が隠れ蓑

CLOAKED BY MUTANT P53

Editor's Choice

Science Signaling 11 May 2021:
Vol. 14, Issue 682, eabj3463
DOI: 10.1126/scisignal.abj3463

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: lferrare@aaas.org

M. Ghosh, S. Saha, J. Bettke, R. Nagar, A. Parrales, T. Iwakuma, A. W. M. van der Velden, L. A. Martinez, Mutant p53 suppresses innate immune signaling to promote tumorigenesis. Cancer Cell 39, 494-508.e5 (2021).
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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33545063/ [PubMed]
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変異型p53が抗腫瘍免疫からSTINGを排除する。

要約

変異型p53タンパク質は多くのがん種の増殖を誘導する。変異型p53は細胞の生存を促進する腫瘍自律的(tumor-autonomous)な役割をもつことが既に知られているが、Ghoshらはそれに加え、非自律的な機構を介して腫瘍の免疫監視を回避する働きがあることを見いだした。p53の変異は染色体の不安定性、小核、および細胞質のDNAと相関し、この後者は自然免疫応答を引き起こすことがある。しかし著者らは、ヒトおよびマウス由来の幅広いがん細胞株において、変異型p53がキナーゼTBK1に結合し、TBK1、サイトゾルのDNA感知経路タンパク質STING、および転写因子IRF3からなる自然免疫応答を引き起こす三量体複合体の形成を阻害することを見いだした(ただし野生型p53はキナーゼTBK1に結合しなかった)。同系腫瘍を移植された正常免疫マウスにおいて、変異型p53の発現はサイトカインプロファイルの変化(大きいものとして、サイトカインIFN-β1分泌の減少など)、易腫瘍形成性の高い免疫細胞プロファイル、および腫瘍増殖の加速を誘導した。しかし、免疫不全マウスに腫瘍を移植したときは、腫瘍増殖の加速は誘導されなかった。さらに、正常免疫マウスの腫瘍において変異型p53の発現が増殖、サイトカインおよび免疫ランドスケープに及ぼす影響は、TBK1の同時過剰発現によって阻害された。この知見を裏付ける変異型p53とIFNB1発現低下の間の相関が、がんゲノムアトラス(TCGA)のヒトトリプルネガティブ乳がんデータから確認された。これらの知見は、腫瘍増殖における変異型p53の非自律的機能を明らかにしたのみならず、TBK1経路を回復する治療薬の開発が、患者において抗腫瘍免疫を再確立する1つの方法である可能性も示唆している。またそれらは、STINGアゴニストを使用する際にはp53の状態を考察する必要があることも示している。STINGアゴニストは現在、がん患者を対象に初期臨床試験が行われており、過去に無増悪生存期間に基づく有効性の欠如のため中止された治験については、上記のことから、これらの結果を再検討しても良いかもしれない。

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2021年5月11日号

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変異型P53が隠れ蓑

Research Article

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