腫瘍浸潤を促進する

Enhancing tumor infiltration

Editor's Choice

Science Signaling 13 Jul 2021:
Vol. 14, Issue 691, eabl3733
DOI: 10.1126/scisignal.abl3733

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: jfoley@aaas.org

D. Huang, X. Chen, X. Zeng, L. Lao, J. Li, Y. Xing, Y. Lu, Q. Ouyang, J. Chen, L. Yang, F. Su, H. Yao, Q. Liu, S. Su, E. Song, Targeting regulator of G protein signaling 1 in tumor-specific T cells enhances their trafficking to breast cancer. Nat. Immunol. 22, 865-879 (2021).
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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34140678/
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F. Fercoq, L. M. Carlin, "Mind the GAP": RGS1 hinders antitumor lymphocytes. Nat. Immunol. 22, 802-804 (2021).
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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34140677/
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ケモカイン受容体インヒビターを標的にすると、抗腫瘍性T細胞の腫瘍への輸送が促進される。

要約

抗腫瘍性ヘルパーT1(TH1)細胞と細胞傷害性T細胞(CTL)によって浸潤された腫瘍を有する患者は、免疫抑制性細胞によって浸潤された腫瘍を有する患者よりも予後が良好である(Fercoq and Carlinによる解説参照)。Huangらは、末梢血中のTH1細胞とCTLの数が同等であっても、腫瘍に浸潤しているTH1細胞とCTLの数が比較的多い乳がん患者は、比較的少ない乳がん患者に比べて、無病生存期間が長いことを示した。高度に浸潤された腫瘍とあまり浸潤されていない腫瘍では、細胞を動員するケモカインの量もTH1細胞とCTLの表面のケモカイン受容体の量も同等であった。健康なドナー由来の末梢血TH1細胞およびCTLに比べると、乳がん患者由来の末梢血TH1細胞およびCTLでは、ケモカイン受容体シグナル伝達を阻害するGTPアーゼ活性化タンパク質RGS1の発現量が増加していた。in vitroアッセイでは、RGS1をノックダウンすると、原発性腫瘍由来の培養上清へのTH1細胞とCTLの遊走が促進された。免疫共沈降法では、TH1細胞とCTLにおいて、RGS1はケモカイン受容体CXCR3、CCR4、CXCR4に結合した。TH1細胞とCTLにおいてRGS1をノックダウンすると、CXCR4リガンドCXCL12に応答してCa2+動員とキナーゼERKおよびAktによるシグナル伝達が促進された。サイトカインのインターフェロンγ(IFN-γ)とその下流のエフェクターSTAT1によるシグナル伝達によって、T細胞でのRGS1発現量が増加した。TH1細胞とCTLでSTAT1シグナル伝達を遮断すると、TH1細胞とCTLのCXCL12への遊走が促進された。最後に、養子導入された腫瘍特異的なRGS1欠損CTLでは、RGS1豊富な細胞と比べて、マウスにおいて腫瘍浸潤の促進が認められ、それによって腫瘍増殖が抑制され、生存が促進された。まとめると、これらのデータは、抗腫瘍性T細胞のRGS1を標的にすれば、腫瘍浸潤と免疫療法を促進する戦略になる可能性があることを示唆している。

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