- ホーム
- PDACにおける脂質トランスポーターの役割
PDACにおける脂質トランスポーターの役割
A role for lipid transporters in PDAC
SCIENCE SIGNALING 31 Aug 2021
Vol 14, Issue 698
DOI: 10.1126/scisignal.abm1199
AMY E. BAEK
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: abaek@aaas.org
S. B. Kemp, E. S. Carpenter, N. G. Steele, K. L. Donahue, Z. C. Nwosu, A. Pacheco, A. Velez-Delgado, R. E. Menjivar, F. Lima, S. The, C. E. Espinoza, K. Brown, D. Long, C. A. Lyssiotis, A. Rao, Y. Zhang, M. Pasca di Magliano, H. C. Crawford, Apolipoprotein E promotes immune suppression in pancreatic cancer through NF-κB-mediated production of CXCL1. Cancer Res. 81, 4305-4318 (2021).
CROSSREF PUBMED GOOGLE SCHOLAR
M. H. Sherman, Lipid carriers in cancer: Context matters. Cancer Res. 81, 4186-4187 (2021).
CROSSREF PUBMED GOOGLE SCHOLAR
ApoEは膵管腺がんの免疫抑制をもたらす
要約
膵管腺がん(PDAC)は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)が豊富な線維炎症性の免疫抑制性微小環境によって特徴づけられる。肝細胞とマクロファージにより分泌されるアポリポプロテインE(ApoE)は、細胞脂質の重要な調節因子であり、細胞表面のリポタンパク質受容体に結合することにより脂質輸送を媒介する。ApoEの役割はアテローム性動脈硬化症やアルツハイマー病でよく特徴付けられているが、さまざまな種類のがんにおけるその役割は状況に依存している。ApoEはPDACストローマに非常に豊富に存在するが、PDACの進行におけるApoEの役割は知られていない。Kempらは、PDAC患者の循環単球がApoEの増加を示し、ApoEタンパク質量が患者の生存率の増加と負の相関関係にあることを発見した(Shermanによる解説を参照)。ApoE駆動型PDACの基となる機構を調べるため、著者らはPDACの同所性マウスモデルを用いた。免疫染色およびその後のscRNA-seq解析から、ApoEはマウス腫瘍で増加し、マクロファージで最も豊富であることがわかった。ApoEノックアウト(ApoE−/−)マウスは、野生型マウスよりも腫瘍量が少なく、骨髄由来サプレッサー細胞が少なく、腫瘍へのT細胞浸潤が多いことから、腫瘍微小環境の免疫抑制状態のApoEによる変化が示唆された。ApoE−/−マウスにおけるCD4+またはCD8+ T細胞の抗体による除去は、腫瘍増殖を回復するのに十分であった。組換えApoEで腫瘍細胞を処理すると、Cxcl1を含むケモカインをコードするいくつかの遺伝子の発現が増加した。著者らはさらに、Cxcl1発現の誘導にはApoEが必要であると特定した。ApoEによるCxcl1の最大限の誘導には、PDAC細胞におけるLDL受容体(LDLR)の活性化とNF-κBの活性が必要であった。免疫抑制PDAC微小環境は、他の固形腫瘍型への見通しを改善したチェックポイント阻害剤ベースの治療戦略への挑戦を提示する。これらの知見は、ApoEの増加が免疫抑制性腫瘍微小環境を媒介するといったApoEとPDACの間のこれまで特徴付けられていなかった関連を確立し、PDACの治療における潜在的な標的への洞察を提供する。