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レプチンをその標的まで輸送する

Transporting leptin to its targets

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
21 Sep 2021 Vol 14, Issue 701
DOI: 10.1126/scisignal.abm4425

WEI WONG

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: wwong@aaas.org

M. Duquenne, C. Folgueira, C. Bourouh, M. Millet, A. Silva, J. Clasadonte, M. Imbernon, D. Fernandois, I. Martinez-Corral, S. Kusumakshi, E. Caron, S. Rasika, E. Deliglia, N. Jouy, A. Oishi, M. Mazzone, E. Trinquet, J. Tavernier, Y.-B. Kim, S. Ory, R. Jockers, M. Schwaninger, U. Boehm, R. Nogueiras, J.-S. Annicotte, S. Gasman, J. Dam, V. Prévot, Leptin brain entry via a tanycytic LepR-EGFR shuttle controls lipid metabolism and pancreas function. Nat. Metab. 3, 1071-1090 (2021).
CROSSREF  PUBMED  GOOGLE SCHOLAR

F. Anesten, J.-O. Jansson, Blood-brain shuttles-a new way to reach the brain? Nat. Metab. 3, 1040-1041 (2021).
CROSSREF  PUBMED  GOOGLE SCHOLAR

レプチンは、レプチン受容体およびEGFRを介してタニサイトにトランスサイトーシスされた後に、その生理学的作用を発揮する。

要約

アディポカインであるレプチンは、中枢に作用し食物摂取を抑制してエネルギーの恒常性を調節し、また末梢に作用してグルコースと脂質の代謝を調節している。レプチンは、タニサイト(有尾上衣細胞:血流と脳脊髄液の間のバリアとして働く、第三脳室を裏打ちしているグリア細胞)にトランスサイトーシスされた後に、中枢の視床下部の標的に到達する。Duquenneらは、レプチンのタニサイトへのトランスサイトーシスに関与する分子成分を同定し、レプチンの末梢および中枢作用におけるトランスサイトーシスの重要性を明らかにした(Anesten and Janssonの論文も参照)。著者らはタニサイトにおけるレプチン受容体(LepR)の存在を確認し、レプチンが細胞内Ca2+の増加をLepR依存性に誘導することを明らかにした。LepRはEGFRと恒常的に会合し、レプチンのトランスサイトーシスにはEGFR依存的なERKの活性化が必要であった。タニサイトでLepRを欠損しているマウスは対照群と比較し、摂餌量が多く、脂肪量が多く、除脂肪量が低く、循環血中のレプチン濃度が高く、脂肪細胞および肝細胞中の脂質蓄積が亢進し、絶食に反応したコルチコステロン濃度増加を引き起こすことができなかった。タニサイトでLepRまたはEGFRを欠損しているマウスはレプチンの腹腔内注射に反応しなかったが、レプチンの脳室内注射後には摂餌量が減少した。タニサイトのLepR欠損により耐糖能およびグルコース刺激性インスリン分泌が障害され、この作用はレプチンの中枢への送達によりレスキューされた。さらにタニサイトでLepRを欠損しているマウスでは、交感神経緊張のアンバランスが認められた。このように、レプチンが中枢性および末梢性に及ぼす影響は、タニサイトにおけるLepRおよびEGFRを介したトランスサイトーシスに依存している。

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