耐性は無駄かもしれない

Resistance may be futile

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
9 Nov 2021 Vol 14, Issue 708
DOI: 10.1126/scisignal.abn1311

AMY E. BAEK

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: abaek@aaas.org

F. Klemm, A. Mockl, A. Salamero-Boix, T. Alekseeva, A. Schaffer, M. Schulz, K. Niesel, R. R. Maas, M. Growth, B. T. Elie, R. L. Bowman, M. E. Hegi, R. T. Daniel, P. S. Zeiner, J. Zinke, P. N. Harter, K. H. Plate, J. A. Joyce, L. Sevenich, Compensatory CSF2-driven macrophage activation promotes adaptive resistance to CSF1R inhibition in breast-to-brain metastasis. Nat. Can. 2, 1086-1101 (2021).
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腫瘍関連マクロファージは代償性のCSFR2b-STAT5経路を介してCSF1R阻害を回避している

要約

脳転移はメラノーマ、肺がんおよび乳がんを含む数種のがん種の進行と関連している。頭蓋内転移性病変を標的とする治療選択肢は限られ、チェックポイント阻害剤治療の成否は原発腫瘍の種類に応じて異なる。腫瘍関連マクロファージ(TAM)は転移の進行と腫瘍細胞の血管外遊走に寄与している。非臨床試験から、CSF1R(コロニー刺激因子1の受容体)の阻害によるTAMの標的化が、神経膠芽腫、メラノーマおよび乳がんモデルにおいて抗腫瘍効果をもつことが明らかとなっている。しかし、この治療の過程では耐性が生じることが多く、その耐性機構はあまり理解されていない。Klemmらは、血液脳関門透過性の低分子CSF1R阻害剤BLZ945によるTAMのCSF1R阻害の長期的影響を、乳がん由来の脳転移(99LN-BrM細胞)非臨床モデルにおいて評価した。BLZ945を投与されたマウスでは、BrM細胞の心腔内注射後48時間における99LN-BrM細胞の血管外遊走が低下し、血管外遊走部位でのがん細胞とミクログリアとの間の相互作用が減少していた。BLZ945はマウスにおいて初め腫瘍の増殖を阻害したが、BrM細胞が再発したことからマウスの長期生存には影響を示さなかった。ミクログリア性のTAM集団はBLZ945依存性の細胞死を回避したが、この集団のRNA-Seq解析からCSFR2b-STAT5関連経路の過剰発現が確認された。BLZ945によるCSFR1の阻害とCSFR2中和抗体によるCSFR2の阻害を同時に行うことで、このBLZ945耐性集団を除去することができた。組織学的解析から、脳のCSF2の大半はPDGFRB+周皮細胞により産生されていることが示された。初めBLZ945を投与した後、CSFR2中和抗体またはSTAT5阻害剤AC4-130のいずれかをBLZ945と併用したとき、マウスにおける腫瘍の増殖が減少した。これらの知見は、トランスレーショナルな観点から重要な洞察を与え、TAMを標的とするがん治療法および代償的耐性機構に関して可能性のある解決方法を示唆している。

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