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区画化されたプリオン
Compartmentalized prions
SCIENCE SIGNALING
22 Mar 2022 Vol 15, Issue 726
DOI: 10.1126/scisignal.abq0860
ANNALISA M. VANHOOK
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: avanhook@aaas.org
Y.Lau, H. P.Oamen, M.Grogg, I.Parfenova, J.Saarikangas, R.Hannay, R. A.Nichols, D.Hilvert, Y.Barral, F.Caudron, Whi3 mnemon association with endoplasmic reticulum membranes confines the memory of deceptive courtship to the yeast mother cell. Curr. Biol.32, 963-974.e7 (2022).
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酵母プリオン様タンパク質Whi3がERの特定領域に拘束されると、その娘細胞への伝播は阻害される。
プリオンタンパク質は、自己増殖して凝集を促進する代替コンホメーションをとることができる。このような性質は、プリオンやプリオン様タンパク質の病的作用の基礎にある一方、これらのタンパク質が通常の細胞機能を果たすために必要である。酵母プリオン様タンパク質のWhi3は、細胞が接合フェロモンを検知したものの接合相手が見つからない場合には凝集型(Whi3mnem)をとる。Whi3mnemの凝集により、そのような「騙しの求愛」を経験した酵母は、接合フェロモンに対する永続的抵抗性を与えられ、フェロモン誘発性の細胞周期停止を回避できるようになる。しかし、従来のプリオンと異なり、Whi3mnemは栄養増殖期に娘細胞に伝播されない。Lauらは、伝播性のプリオンと同様に、Whi3依存性のフェロモン抵抗性が胞子形成期には非メンデル遺伝を呈することを明らかにし、このことは出芽期の娘細胞へのWhi3mnem伝播を阻害する機構の存在を示している。Whi3は小胞体(ER)膜に結合し、長期フェロモン曝露によって、ERにおけるWhi3凝集が増加した。一方、娘細胞に伝播されるSup35のプリオン型の凝集塊は、ERに限局されていなかった。出芽のくびれ部分(bud neck)で内在性のER拡散障壁を破壊すると、Whi3mnemとフェロモン抵抗性状態が娘細胞に伝播された。Whi3のポリグルタミンドメイン(Whi3polyQ)はin vitroで細線維を形成し、Whi3polyQ線維から抽出されたタンパク質は、in vitroでネイティブなWhi3polyQによる線維形成を加速し、騙しの求愛を経験していない細胞においてフェロモン抵抗性を誘導した。フェロモン抵抗性細胞の可溶化物もナイーブ細胞においてフェロモン抵抗性を誘導し、またbud neckの拡散障壁を破壊した場合にはその娘細胞にもフェロモン抵抗性を誘導したことから、Whi3はこの障壁の非存在下で伝播可能な自己増殖コンホメーションをとる可能性が示された。以上の結果から、プリオン様タンパク質を特定の細胞内コンパートメントに拘束することで、病原因子として他の細胞に伝播されるこれらのタンパク質の能力を制限できる可能性が示唆される。