β2ARはSNO化される

The β2AR gets SNOed

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
16 Aug 2022 Vol 15, Issue 747
DOI: 10.1126/scisignal.ade3907

JOHN F. FOLEY

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: jfoley@aaas.org

F. V. Fonseca, T. M. Raffay, K. Xiao, P. J. McLaughlin, Z. Qian, Z. W. Grimmett, N. Adachi, B. Wang, A. Hausladen, B. A. Cobb, R. Zhang, D. T. Hess, B. Gaston, N. A. Lambert, J. D. Reynolds, R. T. Premont, J. S. Stamler, S-nitrosylation is required for β2AR desensitization and experimental asthma. Mol. Cell S1097-2765(22)00651-7 (2022).

β2アドレナリン受容体のS-ニトロシル化は脱感作と内部移行を誘導する

プロトタイプGタンパク質共役受容体(GPCR)の一種であるβ2アドレナリン受容体(β2AR)のアゴニスト(刺激薬)は、喘息患者の治療に用いられている。β2ARを刺激すると一酸化窒素(NO)の産生が引き起こされ、それによって気道の弛緩が促進されるからだ。しかし、β2ARの過剰刺激は、受容体の脱感作と気道平滑筋細胞表面からの内部移行を引き起こす。β2AR刺激によって産生されたNOは、標的タンパク質のシステイン残基をS-ニトロシル化によって翻訳後修飾し、S-ニトロソチオール(SNO)の形成を導く。Fonsecaらは、β2AR自体がNO/SNOによって制御されて気道の緊張に影響しているのかどうかを調べた。HEK293細胞をβ2ARアゴニストまたは細胞透過性SNO供与体(ECNO)で処理すると、β2ARがS-ニトロシル化された(SNO-β2ARを形成した)。S-ニトロシル化の候補となるβ2ARのシステイン残基のうち、アゴニストに誘導されるSNO-β2AR生成に最も重要だったのは、3番目のループにあるCys265であった。ECNOに誘導されたSNO-β2AR形成は、カベオラを介してアゴニスト非依存的に受容体の内部移行を引き起こし、これにはβアレスチン-クラスリン経路は関与しなかった。S-ニトロシル化できないC265S変異型β2ARでは、内部移行の減少がみられ、NOを生成する酵素eNOSの活性促進をもたらした。結果的に、野生型β2ARに媒介された場合に比べて、C265S変異型β2ARに媒介されたシグナル伝達は延長された。β2ARのS-ニトロシル化とキナーゼPKAによるβ2ARのリン酸化は相互依存的であることが生化学的研究によって明らかにされたことから、β2ARのS-ニトロシル化は、β2ARを脱感作するためのフィードバック機構の一部であることが示唆された。野生型マウスと比べて、C265S変異型β2ARを発現するノックインマウスは、メタコリン誘導性の気道狭窄から明らかに保護され、この保護作用にはeNOS活性が必要だった。このC265S型マウスは、喘息モデルの気道過敏症からも保護された。このような条件下で、C265S型マウスでは、肺の炎症性サイトカイン量と免疫細胞浸潤量が減少していた。まとめると、これらのデータは、β2ARのS-ニトロシル化が、喘息または気道炎症を治療するための治療標的になりうる形で、受容体シグナル伝達を脱感作することを示している。

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β2ARはSNO化される

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