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肺がんに対する相補的な補体免疫

Complement-ary immunity to lung cancer

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
1 Nov 2022 Vol 15, Issue 758
DOI: 10.1126/scisignal.adf5050

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: lferrare@aaas.org

F. Shao, Y. Gao, W. Wang, H. He, L. Xiao, X. Geng, Y. Xia, D. Guo, J. Fang, J. He, Z. Lu, Silencing EGFR-upregulated expression of CD55 and CD59 activates the complement system and sensitizes lung cancer to checkpoint blockade. Nat. Cancer 3, 1192-1210 (2022).

肺がんにおいて補体シグナル伝達を回復させるとマウスモデルの免疫療法の有効性が向上する

腫瘍は、免疫監視機構を抑制して回避することに長けており、免疫療法による治療の可能性を阻んでいる。Shaoらは、腫瘍細胞に対する自然免疫応答の一部としてきわめて重要である補体系の阻害を引き起こす肺がん細胞の収束経路を明らかにした。非小細胞肺がん(NSCLC)や他の多様な種類の腫瘍では、補体抑制性タンパク質CD55およびCD59の増加がみられ、これらのタンパク質の誘導はサイトカインシグナル伝達と関連づけられている。著者らは、これら制御性タンパク質がNSCLC細胞株において、Wntシグナル伝達、上皮増殖因子(EGF)、免疫療法抵抗性NSCLCに多くみられるEGF受容体(EGFR)の活性化変異にも応答して選択的に誘導されることを示した。これらの経路は、長鎖非コードRNAであるLINC00973の発現を直接的に誘導するβカテニンの転写活性を活性化した。バイオインフォマティクスとより詳細な生化学的解析では、LINC00973がmicroRNAであるmiR-216bおよびmiR-150のスポンジとして機能し、それによって、miR-216b、miR-150がそれぞれCD55、CD59をコードするmRNAを抑制するのを阻止することを明らかにした。ヒト補体系を有する遺伝子改変マウスにおいてこの系を破壊すると、EGFR変異型NSCLC異種移植片に対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性が向上した。CD55およびCD59の存在量は、ヒト肺がんにおける抗腫瘍免疫細胞の浸潤に逆の相関を示し、予後不良の予測因子となった。これらの知見は、補体系の抑制とそれによる免疫回避がNSCLCの発がん性ドライバーと直接的に関連づけられる一方で、この機構を治療標的にすれば患者の免疫療法の潜在能力を利用できる可能性があることを示している。

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2022年11月1日号

Editor's Choice

肺がんに対する相補的な補体免疫

Research Article

セマフォリン4Dは軟骨細胞の転写リプログラミングにより関節軟骨の破壊と関節の炎症を誘導する

ドキソルビシンはミトコンドリアDNAにインターカレートしAlas1依存性ヘム合成を妨げることによりフェロトーシスと心毒性を引き起こす

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